退職直後の暴落で、資産寿命は18年縮む|DINKsのFIRE試算 EP4
※本記事にはアフィリエイト広告が含まれます。
夫婦ともに35歳・世帯年収1,000万円(手取り806万円)・子どもを持たない選択・大都市の賃貸というモデルケースで、何歳で仕事を辞められるかを家計調査(総務省)2025年の実測値から試算しています。全5回のうち第4回です。
- EP1 現状把握:45歳FIREは届くのか
- EP2 支出最適化:退職年齢を決める3つのレバー
- EP3 非課税枠:NISAの枠は何年で埋まるか
- EP4 リスク:退職直後の暴落は18年縮める(この記事)
- EP5 最終プラン:セミリタイアで動くのは0〜2年
前提の一覧と結論のまとめはシリーズのトップページにあります。本ケースは実在の個人ではなく、統計をもとに構成したモデルケースです。名目利回り4%・物価上昇率2%・想定寿命95歳で計算し、金額はすべて今日の価値に直しています。
結論から:退職直後の暴落で、資産寿命が18年以上縮みます
ここまでの試算では、S2標準型・家賃8.15万円なら59歳で辞めれば資産は95歳まで持つ、という結果でした。
その同じ条件に、退職直後の暴落を入れます。
| シナリオ | 資産が尽きる年齢 |
|---|---|
| 通常(リスクなし) | 95歳まで持続 |
| 暴落 −30%(2年) | 77歳 |
| 暴落 −40%(2年) | 72歳 |
| 円高 −20% | 86歳 |
| 暴落+円高 | 71歳 |
30%の下落が一度来るだけで、95歳まで持つはずだった資産が77歳で尽きます。
これは「平均利回り4%」で計算している限り、まったく見えません。
「試算では持つことになっている。でも本当に大丈夫なのか」
前回までで、退職年齢の目安と、制度をどこまで使えるかが分かりました。数字の上では成立しています。
ただ、引っかかっていることがありました。この試算は平均で計算しているという点です。
名目4%という利回りは、良い年と悪い年をならした数字です。実際の市場は毎年4%ずつ上がるわけではありません。では、悪い年がいちばん都合の悪いタイミングで来たらどうなるのか。
なぜ退職直後だけ特別なのか
資産を積み立てている間は、下落はむしろ買い増しの機会になります。同じ金額でより多く買えるからです。
ところが取り崩しを始めたあとは逆になります。
値下がりした資産を売って生活費に充てることになるので、同じ生活費でもより多くの口数を手放します。市場が回復したときには、増えるための元本が減っています。これが「シーケンスリスク」と呼ばれるものです。
この試算での暴落のモデルはこうです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 下落 | 退職1年目に資産が30%(または40%)減る |
| その後 | 2年間、運用利回りが通常の半分になる |
3年目からは元の利回りに戻ります。一度きりの下落でも、起きる時期が悪いと18年以上の差になります。
では、何年遅らせれば耐えられるのか
暴落を織り込んだうえで、資産が95歳まで持つ最短の退職年齢を出しました。
S2標準型・家賃8.15万円の場合です。
| 前提 | 最短の退職年齢 |
|---|---|
| リスクを見込まない | 59歳 |
| 暴落 −30%×2年を見込む | 62歳 |
| 暴落 −40%×2年を見込む | 64歳 |
| 暴落+円高を見込む | 64歳 |
3年です。
生活水準によって必要な年数は変わります。節約型なら+4年、標準型で+3年、ゆとり型で+2年でした。ゆとり型のほうが少ないのは、もともと遅く辞める前提で資産が厚いためです。
「暴落が来ても大丈夫にしておく」ことを、3年ぶん長く働くと読み替えられます。この3年を払うかどうかは、本人が決めることです。
自分のプランに暴落を入れてみる
ストレステストで暴落率と年数を指定すると、資産が尽きる年齢がどう変わるかが出ます。退職年齢を1年ずつ遅らせて、暴落を入れても持つ年齢を探せます。記事と同じ計算エンジンです。
制度が変わるリスクは、持ち方で受け方が変わります
市場だけがリスクではありません。制度の変更も試算に入れました。
| シナリオ | 資産が尽きる年齢 |
|---|---|
| 金融所得課税が20%→25%に | 95歳まで持続(変化なし) |
| 公的年金等控除が20%縮小 | 95歳 |
金融所得課税の強化は、この世帯にはほとんど効きません。 資産をNISAの非課税口座で持っているためです。
これは裏を返すと、課税口座の比率が高い人ほどこの種の変更に弱いということです。同じ資産額でも、どこに置いてあるかで制度変更の受け方が変わります。
公的年金等控除の縮小は、95歳ちょうどまで持つところまで削ります。年金は老後の収入の柱なので、控除が縮むと手取りが直接減ります。
介護は「退職年齢」より「残していた余裕」を削ります
85歳から89歳までの5年間、介護費用がかかる想定を加えました。85歳以上の要介護認定率は過半数なので、起こりにくい話ではありません。
S2標準型・家賃8.15万円・59歳退職での、95歳時点の残高です。
| 介護の水準 | 月額 | 95歳時点の残高 |
|---|---|---|
| 介護なし | — | 1,816万円 |
| 在宅介護 | 7.5万円 | 626万円 |
| 特別養護老人ホーム | 12万円 | 95歳で尽きる |
| 有料老人ホーム | 20万円 | 94歳で尽きる |
費用の目安は在宅5〜10万円/特養7〜12万円/有料15〜30万円です(生命保険文化センター2024年度)。
退職年齢はほとんど動きません。動くのは残っていたはずの余裕のほうです。在宅介護5年で残高が1,816万円から626万円に減り、施設に入る水準だと資産寿命が95歳を切ります。
「介護で何年遅らせるか」ではなく、「介護の水準をどこまで選べるかが、残していた余裕で決まる」と考えるほうが実態に合います。
この試算に入れていないこと
正直に書いておきます。以下は数字を出していません。
- 2人のうち1人が働けなくなった場合。世帯年収1,000万円という前提そのものが崩れるため、別の試算になります
- 離婚した場合。資産の分割と生活費の二重化で、前提が成立しません
- 現金バッファの効果。この試算の暴落モデルは資産全体に一律で下落を当てるため、現金で持っていた分が守られる効果を表現できていません
いずれも「起きない」という意味ではなく、この試算では扱えていないという意味です。
この試算が崩れる条件
- 暴落が2回以上来る(この試算は一度きりの想定です)
- 物価上昇率が2%を超える
- 公的年金の給付水準が下がる
- 95歳より長生きする
- 子どもを持つ選択をする
みらいコンパスで自分のプランを試す
アプリのストレステストで、同じ確認ができます。
- まず通常の条件で、資産が95歳まで持つ退職年齢を出します
- ストレステストで暴落率と年数を入れ、資産が尽きる年齢がどう変わるかを見ます
- 退職年齢を1年ずつ遅らせて、暴落を入れても持つ年齢を探します。 ここが実際の目標になります
- 制度リスク(金融所得課税・年金等控除)も同じ画面で試せます
入力の注意点は前回までと同じです。月収入は手取り、昇給率は物価上昇率と同じ2%、家賃は「住居計画」に登録して賃料上昇率2%を明示入力、配偶者のリタイア年齢も設定します。介護費用は自動では入らないので、ライフイベントで開始年・終了年・月額を手入力してください。
最終回のEP5「セミリタイアで早く抜けられるのは0〜2年だった」では、完全に辞めるのではなく週2〜3日の働き方に変えた場合を見ます。結果は予想と違いました。
- ← 前の回:EP3 非課税枠:NISAの枠は何年で埋まるか
- → 次の回:EP5 最終プラン:セミリタイアで動くのは0〜2年
5回分の前提と結論はシリーズのトップページにまとめてあります。
🚀 みらいコンパスを試す
記事で学んだことを、
30年後の資産まで自動で試算
NISA・iDeCo・住宅・年金を組み込んだ
無料ライフプランシミュレーター。ブラウザ完結・データは端末内のみ。
