新NISAの枠は、この世帯では11〜24年かけて埋まる|DINKsのFIRE試算 EP3
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夫婦ともに35歳・世帯年収1,000万円(手取り806万円)・子どもを持たない選択・大都市の賃貸というモデルケースで、何歳で仕事を辞められるかを家計調査(総務省)2025年の実測値から試算しています。全5回のうち第3回です。
- EP1 現状把握:45歳FIREは届くのか
- EP2 支出最適化:退職年齢を決める3つのレバー
- EP3 非課税枠:NISAの枠は何年で埋まるか(この記事)
- EP4 リスク:退職直後の暴落は18年縮める
- EP5 最終プラン:セミリタイアで動くのは0〜2年
前提の一覧と結論のまとめはシリーズのトップページにあります。本ケースは実在の個人ではなく、統計をもとに構成したモデルケースです。名目利回り4%・物価上昇率2%・想定寿命95歳で計算し、金額はすべて今日の価値に直しています。
結論から:枠が埋まるのは11〜24年後です
夫婦ふたりの新NISA生涯投資枠は3,600万円(1人1,800万円)。この世帯が全額を使い切るまで、11〜24年かかるという試算になりました。35歳から始めて、46歳から59歳頃です。
理由は単純で、入れられる金額のほうが先に足りなくなるからです。
| 夫婦の年間投資枠 | この世帯の年間投資可能額 | |
|---|---|---|
| 金額 | 720万円 | 149〜331万円 |
年間の枠は720万円あるのに、入れられるのは最大で331万円。枠の半分も使えていません。
「枠が足りない」という悩みは、この世帯には当分来ません。
「NISAもiDeCoも始めた。これで大丈夫なはず」
前回、退職年齢を決めているのは住む場所・暮らし方・運用の3つだと分かりました。では制度はどうか。
NISAもiDeCoも、すでに始めてはいます。やるべきことはやっている感覚がある。ただ、枠を使い切るまでに何年かかるのかを考えたことはありませんでした。
「生涯で1,800万円まで非課税」と聞くと大きな数字に見えます。でもそれは、入れられる人にとっての話です。
枠が埋まるまでの年数
手取り806万円から生活費を引いた残りを、全額NISAに入れた場合です。
| 家賃(月) | 水準 | 年間の投資可能額 | 枠が埋まるまで | その時の年齢 |
|---|---|---|---|---|
| 8.15万円 | S1 節約型 | 330.5万円 | 10.9年 | 46歳頃 |
| 8.15万円 | S2 標準型 | 292.3万円 | 12.3年 | 47歳頃 |
| 8.15万円 | S3 ゆとり型 | 231.6万円 | 15.5年 | 51歳頃 |
| 12万円 | S1 節約型 | 284.3万円 | 12.7年 | 48歳頃 |
| 12万円 | S2 標準型 | 246.1万円 | 14.6年 | 50歳頃 |
| 12万円 | S3 ゆとり型 | 185.4万円 | 19.4年 | 54歳頃 |
| 15万円 | S1 節約型 | 248.3万円 | 14.5年 | 49歳頃 |
| 15万円 | S2 標準型 | 210.1万円 | 17.1年 | 52歳頃 |
| 15万円 | S3 ゆとり型 | 149.4万円 | 24.1年 | 59歳頃 |
生涯投資枠は取得価額でカウントされるため、値上がり益は枠を消費しません。表の年数は「いくら入れたか」だけで決まります。
家賃と生活水準の組み合わせで、埋まる時期が13年ずれます。 ここでも効いているのは前回の3つのレバーです。
「枠が足りない」は、別の人の悩みです
NISAの解説記事では「年間360万円の枠をどう埋めるか」「生涯枠を使い切ったあとの課税口座をどうするか」という話をよく見ます。
この世帯には、当分その段階が来ません。
| 年間360万円の枠を1年で埋められるか | |
|---|---|
| 1人あたりの投資可能額(最大・S1/家賃8.15万) | 年165万円程度 |
| 必要な額 | 年360万円 |
夫婦合算でも、年間枠720万円に対して最大331万円です。年間の枠を使い切れる世帯なら生涯枠はもっと早く埋まり、そのあとの課税口座をどうするかが論点になります。ただしそれは、この世帯の段階ではありません。
自分の段階にない論点を調べて時間を使わないでください。 いま効くのは枠の最適化ではなく、入れられる金額を増やすこと、つまり生活費と家賃のほうです。
自分の積立額で、枠が埋まる時期を見る
NISAを本人とパートナーで別々に登録して積立額を入れると、生涯枠3,600万円に届く時期と、資産が95歳まで持つ退職年齢の両方が出ます。記事と同じ計算エンジンです。
iDeCoは「60歳まで引き出せない」が効きます
iDeCoは掛金が全額所得控除になるので、税の面では確かに有利です。ただしこのケースでは、別の性質が問題になります。
原則60歳まで引き出せません。
前回の試算で、資産が95歳まで持つ最短の退職年齢は57〜67歳でした。節約型で家賃8.15万円なら57歳です。
このとき、57歳から60歳までの3年間はiDeCoに手をつけられません。その間の生活費は、NISAと課税口座から出すことになります。
| 退職年齢 | iDeCoを使えない期間 |
|---|---|
| 57歳(S1・家賃8.15万) | 3年 |
| 59歳(S2・家賃8.15万) | 1年 |
| 63歳以降 | なし |
早く辞めるほど、iDeCoは使いにくくなります。 税制上の有利さと、早期リタイアという目的が噛み合わない部分です。
「iDeCoを使うな」という話ではありません。何歳で辞めるつもりかによって、置く場所の配分が変わるということです。
企業型DCは、この前提にはありません
このケースは企業年金のない会社員として試算しています。企業型DCがある場合はiDeCoの掛金上限が変わるので、ご自身の勤務先の制度を確認してください。
制度は効きます。ただし決定打ではありません
非課税の効果は確実にあります。運用益に約20%の税がかからないぶん、同じ利回りでも手元に残る額が増えます。
ひとつ、この試算から言えることがあります。資産をNISA中心で持っていると、金融所得課税が強化されたときの影響を受けにくくなります。
課税を20%から25%に引き上げる想定で試算すると、この世帯の資産寿命は変わりませんでした。資産が非課税口座にあるためです。課税口座の比率が高い人ほど、この種の制度変更の影響を受けます。
ただし、退職年齢を動かす力という点では控えめです。
| 打ち手 | 退職年齢への効き |
|---|---|
| 暮らし方(生活費の水準) | 5〜6年 |
| 住む場所(家賃) | 4〜5年 |
| 運用(利回り3%→5%) | 4〜5年 |
| 非課税制度を使い切る | 上の「運用」に含まれる |
非課税は利回りを底上げする形で効くので、独立した4つめのレバーにはなりません。制度を完璧に使っても、生活費の選択を変えたときほどは動きません。
この試算が崩れる条件
- 制度が変更される(年間枠・生涯枠・非課税期間・iDeCoの受給開始年齢)
- 投資可能額を全額NISAに入れない(現金バッファを厚く持つなど)
- 2人のうち1人が働けなくなる
- 子どもを持つ選択をする
- 物価上昇率が2%を超える
みらいコンパスで確かめる
積立額を変えて、枠が埋まる時期がどう動くかを見られます。
- 資産を登録するとき、NISAは本人とパートナーで別々に登録します(NISAは一人一口座のため)
- 毎月の積立額を入れて、生涯枠3,600万円に届く時期を確認します
- 月収入には手取りを入れます(額面ではありません)
- 昇給率を物価上昇率と同じ2%にします
- 家賃はライフイベントの「住居計画」で登録し、賃料上昇率に2を入力します
- 配偶者のリタイア年齢も設定します
- 物価上昇率2%、実質値表示をONにします
積立額を月1万円ずつ変えて、埋まる時期と退職年齢の両方がどう動くかを見比べてみてください。枠が埋まる時期は大きく動くのに、退職年齢はあまり動かないことが確かめられます。
EP4「退職直後の暴落で、資産寿命は18年縮む」では、計画が崩れる条件のほうを見ます。
- ← 前の回:EP2 支出最適化:退職年齢を決める3つのレバー
- → 次の回:EP4 リスク:退職直後の暴落は18年縮める
5回分の前提と結論はシリーズのトップページにまとめてあります。
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