老後資産の取り崩しシミュレーション|60歳・2,502万円は何歳まで持つか

老後・資産運用

老後資産の取り崩しシミュレーション|60歳・2,502万円は何歳まで持つか

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この記事でわかること
  • 60歳・金融資産2,502万円(家計調査の実測値)で取り崩すと何歳まで持つか
  • 働く期間と支出で、資産寿命が69歳から80歳まで動く試算
  • 医療費の自己負担は70歳以降ほぼ横ばいになること(高額療養費の上限)
  • 年金を繰下げると、75歳以降の窓口負担が1割から2割に上がる場合があること
この記事のモデルケースについて

登場する夫婦は実在しません。金額と資産の内訳はすべて公的統計の実測値です。 筆者が決めたのは想定余命95歳と介護費の置き方、そして運用利回りだけで、前提は本文で全部公開します。 試算はみらいコンパスで行い、同じ入力で同じ結果が再現できます。

目次

結論:打ち手を積むと69歳が80歳になる試算になりました

  資産が尽きる年齢 95歳まで持たせるのに必要な資産
何もしない 69歳 6,052万円(3,550万円不足)
60〜64歳だけ働く 74歳 5,498万円
69歳まで働く 76歳 5,219万円
+65歳以降の支出を月24万円に 80歳 4,296万円(1,794万円不足)

そして、この試算でいちばん意外だったのはここです。

有価証券の運用利回り 3% 5% 7%
資産が尽きる年齢 76歳 76歳 77歳

利回りを3%から7%まで動かしても、変わるのは1年です。 一方で、働く期間は7年、支出は4年動かします。

相場がどうなるかより、いつまで働くか・いくら使うかのほうが効く、という結果でした。

年金の受給を遅らせる「繰下げ」も試しました。こちらは資産が尽きる年齢を縮める代わりに、必要な資産を最大1,179万円下げます。評価が指標によってはっきり分かれるので、本文で別に扱います。

「貯め方は分かった。減らし方を誰も教えてくれない」

60歳の夫が定年を迎えたところです。妻は同い年。子どもは独立し、持家のローンは完済しています。

決めなければいけないことが同時に来ました。

  • 退職金を一時金で受け取るか、年金形式にするか
  • 再雇用の契約を結ぶか
  • そして、いつから、いくらずつ取り崩していいのか

積立の記事は山ほど読んできました。NISAもiDeCoも、つみたての記事は検索すればいくらでも出てきます。ところが、減らし方の記事がほとんどないことに気づきます。

調べると用語は出てきます。定額法、定率法、バケツ戦略、4%ルール。ただ、どれも「こういう方式があります」という解説で止まっていて、自分の資産額だとどうなるのかが分かりません。必要なのは解説ではなく、自分の数字で試算した結果でした。

前提をすべて公開します

前提を動かせば結論は作れてしまいます。生活費を数万円下げれば「足りる」に変わります。なので、筆者が選べる数字をなくしました。

お金の前提

項目 値 出所
月の支出(60〜64歳) 33.0万円 家計調査2025 第3-2表 無職世帯60〜64歳:消費支出287,859円+非消費支出42,164円
月の支出(65歳〜) 26.4万円 同 参考4 夫婦高齢者無職世帯:消費支出263,979円
年金(65歳〜・2人分) 月22.2万円 同 参考4 可処分所得221,544円
勤め先収入(60〜64歳) 月9.6万円 同 第3-2表 無職世帯60〜64歳:96,194円
勤め先収入(65〜69歳) 月5.2万円 同 第3-2表 無職世帯65〜69歳:51,969円
医療費の上乗せ 65歳〜1.3万/75歳〜2.4万/85歳〜3.6万(月) 2024年度 国民医療費 ÷ 該当年齢人口 × 自己負担20%
インフレ率 2% 日本銀行「物価安定の目標」

資産の前提(ここが今回の試算で重要です)

金融資産は合計2,502万円。その内訳も家計調査の実測値に合わせました。

置き場所 金額 想定利回り 税金のかかり方
預貯金 1,423万円(57%) 0.2% 利子に毎年課税
生命保険など 453万円(18%) 1.0% —
有価証券(特定口座の投資信託) 626万円(25%) 5% 売却するまで課税されない
合計 2,502万円 加重1.55%  

出所は家計調査2025 第8-5表の60〜69歳(貯蓄2,749万 − 負債247万、内訳は通貨性預貯金887万・定期性預貯金648万・生命保険489万・有価証券674万)。構成比をそのまま使いました。

この「預貯金が57%」という内訳が、結果をほぼ決めています。 利回りの想定を変えても結果が動かないのはこのためです。

利回りだけは筆者の設定値です。 預貯金0.2%・生命保険1.0%・有価証券5%。 有価証券を3%にしても7%にしても結論は変わらないことを本文で確かめています。

設定値(統計で埋まらない部分)

項目 値 考え方
介護費 在宅 月7.5万円 × 85〜89歳 月額は在宅介護の目安5〜10万の中央値/期間は生命保険文化センターの平均61.1ヶ月
想定余命 95歳 夫婦とも95歳まで生きる前提

出発点:何もしないと69歳です

まず、まったく働かない場合です。

年齢 支出(医療費込み) うち医療費 年金 取り崩し 残高
60歳 396.0万 0 0 397.0万 2,143万
64歳 396.3万 0 0 399.1万 521万
65歳 363.2万 47.1万 255.4万 109.6万 409万
69歳 364.0万 46.9万 246.0万 61.9万 0

※現在価値(今の物価に換算した金額)。支出欄は医療費を含んだ合計です。

年金が出るまでの5年で、資産の8割が消えます(2,502万 → 521万)。95歳まで持たせるには6,052万円必要で、3,550万円足りません。

ここが出発点です。

やったことを、順番に

① 60〜64歳だけ働く — 69歳 → 74歳

いちばん脆いのは、年金が出るまでの5年でした。そこで、統計に出ている実測の勤め先収入を入れてみます。特別な想定ではなく、この年齢の無職世帯が実際に得ている水準(月9.6万円)です。

統計上、無職世帯60〜64歳の有業人員は0.64人。世帯主が引退しても、配偶者などが働いているケースが含まれます。夫が完全に引退して妻がパートに出ている、という形でもこの金額になります。

5年伸びました。 必要資産は6,052万 → 5,498万に下がります。

② 69歳まで延ばす — 74歳 → 76歳

65歳以降も月5.2万円(これも実測値)で働き続けると、さらに2年伸びます。

年齢 支出(医療費込み) うち医療費 年金 就労 取り崩し 残高
60歳 396.0万 0 0 115.0万 281.0万 2,258万
64歳 396.3万 0 0 106.2万 291.9万 1,073万
65歳 363.2万 47.1万 255.4万 56.2万 52.5万 1,016万
69歳 364.0万 46.9万 246.0万 51.9万 66.1万 757万
70歳 346.2万 28.7万 244.5万 0 104.2万 651万
76歳 345.3万 29.1万 236.0万 0 94.0万 0

65〜69歳は、取り崩しが年50〜66万円に収まります。 年金と就労収入の合計が支出に近づくためです。64歳時点で1,073万円を残せたことが、ここで効いてきます。

この区間の医療費が年47万円と高いのは、65〜69歳の自己負担が3割だからです。70歳から2割になり、年29万円に下がります。

そしてここから先、医療費はほぼ横ばいのままです(75歳29.0万/80歳28.9万/85歳29.3万)。高額療養費の制度に月あたりの上限があるためで、年齢とともに自己負担が増え続けるわけではありません。

ただし就労収入には注意があります。アプリの臨時収入は物価調整されません。表の就労欄が115.0万 → 106.2万と下がっているのは、名目では同じ額でも実質的に目減りしているからです。

③ 65歳以降の支出を月24万円に — 76歳 → 80歳

月26.4万円を24万円に、2.4万円下げます。

4年伸びました。 必要資産は5,219万 → 4,296万で、923万円下がります。働く期間を5年延ばすのと同じくらい効きます。

年金の繰下げは、指標によって評価が分かれます

ここまでの3つとは性質が違うので、節を分けます。

繰下げ受給は、65歳からの受給を遅らせると1ヶ月あたり0.7%ずつ年金が増える制度です。68歳なら+25.2%、70歳なら+42%になります。

受給開始 資産が尽きる年齢 95歳までの必要資産
65歳(基準) 76歳 5,219万
66歳 76歳 4,858万
67歳 75歳 4,541万
68歳 72歳 4,265万
69歳 68歳 4,040万
70歳 68歳 4,373万

※65歳以降の支出は月26.4万円のまま(支出削減とは組み合わせていません)

資産が尽きる年齢で見ると、繰下げは一貫して悪化します。 76歳が70歳受給では68歳まで下がります。繰下げている間は年金が1円も入らないうえ、65〜69歳は医療費の自己負担が3割で夫婦2人分かかります。年金待機期間の負担がいちばん重いところに、収入がない期間を重ねる形になるからです。

一方、必要資産は69歳まで下がります。 5,219万円から4,040万円まで、1,179万円の差です。受け取り始めたあとの年金が増えるので、長生きした場合の備えとしては効きます。

ただし70歳まで待つと4,373万円へ跳ね返ります。 ここに繰下げの副作用があります。

評価が真逆に割れます。 手元の資産を長持ちさせたいなら繰下げない、95歳まで持たせる前提で必要額を減らしたいなら繰下げる。 繰下げ待機中に暮らせるだけの現金があるかが分かれ目になります。

繰下げで医療費の負担割合が上がることがあります

75歳以上の窓口負担は原則1割ですが、一定以上の所得がある人は2割になります。判定の線は、夫婦など複数人の世帯で年320万円(課税所得などから計算した額)です。

この夫婦はちょうど境目にいます。

受給開始 75歳時点の収入(今日の金額) 窓口負担 年間の医療費
69歳 315万円 1割 29.0万円
70歳 334万円 2割 52.8万円

※世帯合計・現在価値

繰下げで年金が増えた結果、320万円の線を越えます。 医療費が75歳以降ずっと約1.8倍になり、増えた年金ぶんを使ってしまいます。高額療養費の月あたりの上限も、低所得区分の25,700円から61,500円に上がります。

71歳・72歳まで待つと必要資産はまた下がり(4,217万円・4,128万円)、73歳以降は増えていきます。繰下げの効き方は一本調子ではありません。

この判定はアプリの概算です。 課税所得の計算に社会保険料控除などを含めておらず、住民税の非課税限度額も自治体で異なります(おおむね35〜45万円)。実際の判定は毎年8月1日を基準日に市区町村が行います。この条件ではそうなる、という試算として読んでください。

アプリで繰下げを試すときは

みらいコンパスには「支出が下がる年齢」という入力欄があります。ここに65を入れてください。

未入力のままだと、支出が下がるタイミングが年金の受給開始年齢に合わせられます。受給を68歳にすると、支出が月33万円から26.4万円に下がるのも68歳からになり、上の表とは違う結果が出ます。

家計調査の26.4万円は「65歳以上の夫婦高齢者無職世帯」の実測値で、年齢に伴う支出の減少です。年金をいつ受け取るかとは別の話なので、65歳と入れるのが実態に合います。

利回りを動かしても、結果はほとんど変わりません

ここまで利回りの話をしてきませんでした。理由があります。

有価証券の運用利回り 3% 4% 5% 7%
資産が尽きる年齢 77歳 78歳 78歳 79歳

3%と7%で1年です。 資産の57%が預貯金で、値動きする有価証券は25%しかないためです。

打ち手の効き方と並べると、差がはっきりします。

動かすもの 変わる年数
働く期間(0年 → 10年) +7年
65歳以降の支出(月2.4万円) +4年
運用利回り(3% → 7%) +1年
年金の受給開始(65歳 → 69歳) −8年(必要資産は1,179万円減)

相場の予想を当てにいくより、働く期間と支出のほうが結果を大きく動かすという試算でした。

ただしこれは「この資産構成なら」の話です。資産をどこに置くかを変えると、結果はもっと動きます。その話は別記事に分けました(末尾にリンクがあります)。

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崩れる条件も、同じ重さで書きます

条件 影響
働けなくなる 60〜64歳だけで終わると74歳、まったく働けないと69歳
介護費が想定より重い 必要資産が540万円増えます(在宅 月7.5万×5年を入れた場合と入れない場合の差)
利回りが3%に下がる 影響なし(76歳のまま・必要資産は575万円増)

いちばん重いのは、働けなくなることです。 この試算は69歳まで働ける前提に立っています。健康を崩せば、前提ごと崩れます。

85歳以上の要介護認定率は57.7%です(厚生労働省 介護保険事業状況報告 令和5年度)。過半数が該当するので、「うちは大丈夫だろう」で外すには高い確率です。この試算では在宅介護を基本シナリオに含めています。

取り崩し方式を変えるとどうなるか

方式 資産が尽きる年齢 95歳までの必要資産
定額法(必要額だけ取り崩す) 76歳 5,219万
定率法(残高の4%) 尽きない 4,379万

定率法は残高の4%しか引き出さないので、計算上は尽きません。ただ、持つ理由を正直に書く必要があります。残高が減れば、引き出せる額も自動的に減ります。

「95歳まで資産が残る」ことと「95歳まで同じ生活ができる」ことは別です。資産を残すか・生活水準を守るかのトレードオフとして選ぶものだと考えています。

なお定率法の必要資産だけは、アプリの中で算出方法が他と違います(他は年ごとのシミュレーションで逆算、定率は計算式で算出)。並べて比べるときは頭に置いてください。 各方式の仕組みそのものは老後資産の取り崩し戦略を比較|定額・定率・バケツ・4%ルールの違いにまとめています。

安心材料も挙げます

ここまで厳しい数字が続いたので、この試算が保守的に置かれている点を挙げます。

  • 夫婦とも95歳まで生きる前提です。 実際に85歳の時点で夫婦とも生存しているのは23.3%(厚生労働省 簡易生命表)。4組に1組です
  • 生活費を一定としています。 家計調査の実測では、消費支出は60代前半を100として85歳以降は81.4まで下がります
  • 公的介護保険の自己負担は原則1〜2割で、高額介護サービス費の上限もあります
  • 医療費の所得区分は概算です。 社会保険料控除などを含めずに判定しているため、実際の区分とずれることがあります
  • 住民税の非課税限度額は自治体で異なります(おおむね35〜45万円)。お住まいによって医療費の負担区分が変わる場合があります

まとめ:相場より、働く期間と支出

順番 打ち手 資産が尽きる年齢
— 何もしない 69歳
1 60〜64歳だけ働く 74歳
2 69歳まで延ばす 76歳
3 65歳以降の支出を月24万円に 80歳

不足額は3,550万円から1,794万円まで縮みます。繰下げは別の軸です。資産が尽きる年齢は縮みますが、必要資産を最大1,179万円下げます。

そしてこの数字は統計の平均値です。 あなたの資産額・年金額・支出・働ける年数は違います。1,794万円という不足額も、前提が変われば動きます。

自分の数字で試算する手順

この記事の試算はみらいコンパスで行っており、同じ入力で同じ結果が再現できます。

アプリの入力欄 この記事の値 あなたの値に置き換える
資産 預貯金1,423万/生命保険453万/投資信託626万 お持ちの資産と口座種別
① 月の生活費 33.0万円 今の支出(税・社会保険料を含む)
③ 年金受給期の月支出 26.4万円 65歳以降の想定支出
年金月額 11.1万円 × 2人 ねんきん定期便の見込額
臨時収入(就労) 60〜64歳 月9.6万/65〜69歳 月5.2万 働ける見込みの手取り

そのままにしておく項目:インフレ率 2%・想定余命 95歳・年金改定モード「物価連動 − マクロスライド調整(推奨)」。医療費は計上するチェックを入れたままにしてください(自己負担の割合は年齢と所得から自動で判定されます)。介護を入れる場合は、ライフイベントに開始2051年・終了2055年・月7.5万円。

繰下げを試すときは「支出が下がる年齢」に65を入れてください。 未入力だと支出の切替が受給開始年齢に合わせられ、本文の表とは別の結果になります。

この記事では「必要資産」としてアプリの必要資産ラインの値を使っています。アプリには別の画面にも目標額があり、算出方法が違うため数字がずれます。

資産をどこに置くかで、さらに変わります

ここまでは行動(働く期間・支出・受給開始)の話でした。実は同じ2,502万円でも、どこに置くかで資産が尽きる年齢が5年変わります。

預貯金が57%を占めるこの構成を見直すと何が起きるか、そして課税のタイミングがどう効くかは、別記事にまとめました。

→ 同じ2,502万円でも資産寿命が5年変わる|老後資産をどこに置くか

試算の再現性と免責

本記事の数値は、みらいコンパスと同じ計算コードを読み込んで出した結果です。前提の出所は本文にすべて記載しています。 本記事は情報提供であり、投資助言ではありません。 試算は前提条件に基づく計算結果で、将来の運用成果・年金額・制度を保証するものではありません。

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