退職年齢を決めているのは、住む場所と暮らし方と運用|DINKsのFIRE試算 EP2

老後・資産運用

退職年齢を決めているのは、住む場所と暮らし方と運用|DINKsのFIRE試算 EP2

※本記事にはアフィリエイト広告が含まれます。

このシリーズについて

夫婦ともに35歳・世帯年収1,000万円(手取り806万円)・子どもを持たない選択・大都市の賃貸というモデルケースで、何歳で仕事を辞められるかを家計調査(総務省)2025年の実測値から試算しています。全5回のうち第2回です。

前提の一覧と結論のまとめはシリーズのトップページにあります。本ケースは実在の個人ではなく、統計をもとに構成したモデルケースです。名目利回り4%・物価上昇率2%・想定寿命95歳で計算し、金額はすべて今日の価値に直しています。

目次

結論から:3つのレバーは、ほぼ同じ大きさで効いています

前回、資産が95歳まで持つ最短の退職年齢は57〜67歳という試算になりました。10年の開きがあります。

この幅を決めているのは3つです。どれも効き方はほぼ同じでした。

レバー 動く年数 いつ選べるか
暮らし方(住居以外の生活費) 5〜6年 いつでも変えられる
住む場所(家賃) 4〜5年 引っ越すときだけ。決めると60年続く
運用(名目利回り) 4〜5年 選べない。市場次第

違うのは効き方ではなく、いつ選べるかです。

「もっと利回りの良い商品はないか」と探し始めた

前回の試算を見たあと、最初に考えたのは運用のことでした。利回りが上がれば早く辞められるはずだ、と。

ところが調べるほど分からなくなります。期待リターンの高い商品を探せばいいのか、積立額を増やすのか、固定費を削るのか。どれも「効きます」と書いてあって、どれがどれくらい効くのかが比較できません。

そこで、3つのレバーを同じ条件で動かして、退職年齢が何年変わるかを並べてみました。

自分がどこにいるかを見る表

名目利回り4%・物価上昇率2%・賃料上昇率2%・初期資産1,358万円。資産が95歳まで持つ最短の退職年齢です。

家賃(月) S1 節約型 S2 標準型 S3 ゆとり型
8.15万円(統計平均) 57歳 59歳 63歳
12万円(都市部2LDK) 60歳 62歳 65歳
15万円(都心2LDK) 62歳 64歳 67歳

生活費の3水準は家計調査2025年の実測値です。

  住居以外(年) 家賃8.15万のとき合計 年間の投資可能額
S1 節約型 377.7万円 475.5万円 330.5万円
S2 標準型 415.9万円 513.7万円 292.3万円
S3 ゆとり型 476.6万円 574.4万円 231.6万円

単一の答えは出しません。 自分の家賃と生活水準が交わるところを見てください。

表を横に読むと家賃の効き、縦に読むと暮らし方の効きが分かります。8.15万円の行で57歳から63歳まで6年、S1の列で57歳から62歳まで5年動きます。

家賃は「選べる回数が少ない」レバーです

3つのうち、家賃だけ性質が違います。

生涯で払う家賃(35歳から95歳までの60年・今日の価値)

家賃(月) 生涯の総額
8.15万円 5,868万円
12万円 8,640万円
15万円 1億800万円

都心の2LDKに住み続けると、生涯で1億円を超えます。8.15万円との差は約4,900万円です。

そして老後になっても家賃だけは減りません。

年齢 生活費の合計 うち家賃 家賃の比率
59歳 513.5万円 97.6万円 19.0%
65歳 465.4万円 97.7万円 21.0%
85歳 469.2万円 97.7万円 20.8%

生活費の合計は年齢とともに下がるのに家賃は一定なので、高齢期ほど家計に占める比重が上がります。

住む場所は日々の満足度に直結するので、「下げればいい」という話ではありません。ただ、決める機会が引っ越しのときしかなく、影響が60年続くという性質は知っておく価値があります。

「節約しろ」という話ではありません

S1からS3まで、どれが良いという話をするつもりはありません。年376万円で暮らすか477万円で暮らすかは、何に価値を置くかの問題です。

書きたいのは別のことです。その選択が、退職年齢を5〜6年決めているという事実です。

月8万円ぶんの生活水準の違いが、5〜6年を動かします。これは運用の利回りを2ポイント動かすのと同じくらいの効果です。

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自分の家賃と生活費で、この表を作る

家賃と生活費を1万円ずつ動かすと、資産が95歳まで持つ退職年齢が何年変わるかが出ます。記事と同じ計算エンジンです。生活費がまだ曖昧な場合は、先に家計コンパスで支出を整理してから試算できます。

みらいコンパスで試算する →先に家計コンパスで支出を整理する →

利回りを軽視する話でもありません

運用もちゃんと効きます。家賃8.15万円での利回り感度です。

生活水準 名目3% 名目4% 名目5%
S1 節約型 59歳 57歳 55歳
S2 標準型 61歳 59歳 57歳
S3 ゆとり型 65歳 63歳 60歳

3%か5%かで4〜5年動きます。3つのレバーの中で見劣りしません。

ただし確実性が違います。

商品を選び直したからといって、利回りが2ポイント上がる保証はありません。市場がどうなるかは自分では決められません。一方、家賃と生活費は、選べば確実にその額になります。

同じ4〜5年でも、取りにいける4年と、結果でしかない4年があります。

別の見方:収入を上げる

「使う額を減らすより、稼ぐ額を増やすほうがいいのでは」という考え方もあります。

ただし、額面が増えても手取りは同じようには増えません。 年収が上がるほど税と社会保険料の割合が高くなるためです。

年間収入の階級 非消費支出率(税+社保÷実収入)
第1十分位 12.6%
第5十分位 16.7%
第9十分位 20.6%
第10十分位 23.8%

出典は家計調査2025年(二人以上の世帯のうち勤労者世帯・年間収入十分位階級別)。このケースの世帯年収1,000万円では19.4%です。

収入を上げる選択は当然ありますが、手取りは額面ほどには伸びないことは計算に入れておく必要があります。

この試算が崩れる条件

  • 2人のうち1人が働けなくなる(世帯年収1,000万円の前提が崩れます)
  • 子どもを持つ選択をする(教育費が加わり、この前提は成立しなくなります)
  • 持ち家に切り替える(住居費の構造が変わるため、この表は使えません)
  • 物価上昇率が2%を超える(実質の利回りが下がります)
  • 公的年金の給付水準が下がる
  • 95歳より長生きする

みらいコンパスで自分の表を作る

この表は自分の数字でも作れます。家賃を扱う回なので、入力を間違えると結果が大きくずれる箇所を先に書いておきます。

賃料上昇率に2を必ず入力してください

アプリの賃料上昇率は、未入力だと0%(横ばい)で計算されます。

生活費は物価上昇率2%で膨らむのに家賃だけ横ばいだと、家賃が実質で目減りしていくことになります。その結果、退職年齢が2〜5年早く(楽観的に)出ます。

家賃(月) S1 節約型 S2 標準型 S3 ゆとり型
8.15万(上昇率2%) 57歳 59歳 63歳
8.15万(未入力=0%) 54歳 57歳 60歳
15万(上昇率2%) 62歳 64歳 67歳
15万(未入力=0%) 57歳 60歳 63歳

家賃が高いほどずれが大きくなります。この記事では、家賃が実質で一定(名目で物価と同じ2%上昇)という前提を置いています。

そのほかの手順

  1. 月収入には手取りを入れます(額面ではありません)
  2. 昇給率を物価上昇率と同じ2%にします。 0%のままだと実質の貯蓄余力が年々消えていきます
  3. 月の生活費には家賃を含めません。家賃はライフイベントの「住居計画」で賃貸として登録します
  4. 配偶者のリタイア年齢も設定します。 未設定だと配偶者が働き続ける前提になります
  5. 物価上昇率2%、実質値表示をONにします
  6. リタイア後の月支出は退職時点の物価で入力します(入力欄の下に今日の金額への換算が出ます)
  7. 期待年利は名目で3%・4%・5%の3通りを見ます

家賃と生活費を1万円ずつ動かして、自分の表の形を確かめてみてください。

EP3「新NISAの枠は、この世帯では11〜24年かけて埋まる」では、生涯投資枠がいつ埋まるのかを見ます。

このシリーズの他の回

5回分の前提と結論はシリーズのトップページにまとめてあります。

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