世帯年収1,000万の共働きは、45歳でFIREできるのか|DINKsのFIRE試算 EP1
※本記事にはアフィリエイト広告が含まれます。
夫婦ともに35歳・世帯年収1,000万円(手取り806万円)・子どもを持たない選択・大都市の賃貸というモデルケースで、何歳で仕事を辞められるかを家計調査(総務省)2025年の実測値から試算しています。全5回のうち第1回です。
- EP1 現状把握:45歳FIREは届くのか(この記事)
- EP2 支出最適化:退職年齢を決める3つのレバー
- EP3 非課税枠:NISAの枠は何年で埋まるか
- EP4 リスク:退職直後の暴落は18年縮める
- EP5 最終プラン:セミリタイアで動くのは0〜2年
前提の一覧と結論のまとめはシリーズのトップページにあります。本ケースは実在の個人ではなく、統計をもとに構成したモデルケースです。名目利回り4%・物価上昇率2%・想定寿命95歳で計算し、金額はすべて今日の価値に直しています。
結論から:45歳では届きません
夫婦ともに35歳・世帯年収1,000万円・子どもを持たない選択・大都市の賃貸。この条件で45歳の完全リタイアを試算すると、資産見込みは2,103万〜3,783万円、必要な額は1億943万〜1億6,293万円でした。差は7,160万〜1億4,190万円あります。
では何歳なら届くのか。資産が95歳まで持つ最短の退職年齢は57〜67歳という試算になりました。
この記事は「諦めてください」という話ではありません。何を変えると何年動くのかが数字で見える、という話です。
「先輩が50代前半で辞めた」から始まった
きっかけは、同じ部署の先輩が50代前半で会社を辞めたことでした。
夫婦とも35歳の会社員で、年収は各500万円。国税庁の民間給与実態統計調査の平均給与478万円とほぼ同じ水準です。子どもを持たない選択をしていて、住まいは大都市の賃貸。貯蓄は1,358万円。
自分たちにもできるのか、と調べ始めました。ところが検索して出てくるFIRE記事は「可能」と書いてあるものが多いのに、前提が自分たちと噛み合っている気がしない。年収が倍だったり、持ち家だったり、年金を一切考えていなかったりします。
そこで、家計調査の実測値に前提を全部紐づけて、95歳まで1年ずつ取り崩しを計算してみることにしました。
※本ケースは実在の個人ではなく、統計をもとに構成したモデルケースです。
前提を全部開きます
| 項目 | 値 | 出所 |
|---|---|---|
| 世帯年収 | 1,000万円(各500万円) | 国税庁 民間給与実態統計調査 |
| 非消費支出(税・社会保険料) | 194万円(19.4%) | 家計調査2025 第2-5表の十分位実測 |
| 手取り | 806万円 | 上記より算出 |
| 初期資産 | 1,358万円 | 家計調査2025 第8-5表(30代の貯蓄÷年収=1.36倍を年収1,000万に適用) |
| 家賃 | 月8.15万円 | 家計調査2025 第3-7表 大都市・民営借家の実測 |
| 住居以外の生活費 | 年377.7万/415.9万/476.6万 | 家計調査2025の実測値から住居費と教育費を除いて再構成 |
| 想定寿命 | 95歳 | — |
生活費は1本に決めず、3つの水準で並べます。
| 住居以外 | 家賃 | 合計 | 年間の投資可能額 | |
|---|---|---|---|---|
| S1 節約型 | 377.7万 | 97.8万 | 475.5万 | 330.5万 |
| S2 標準型 | 415.9万 | 97.8万 | 513.7万 | 292.3万 |
| S3 ゆとり型 | 476.6万 | 97.8万 | 574.4万 | 231.6万 |
S1は家計調査の「夫婦のみの世帯」(教育費が月16円=実質ゼロ)、S2とS3は年収帯の十分位から教育費を除いたものです。
なぜ4%ルールを使わないのか
FIREの記事でよく出てくる「資産の4%を毎年取り崩す」という経験則は、この条件には当てはまりません。理由は2つあります。
①想定している期間が違う。 4%ルールはもともと30年間の取り崩しを想定した経験則です。50歳前後で退職すると、95歳まで40年以上になります。
②公的年金を無視している。 この夫婦は65歳から年金を受け取ります。それを計算に入れないと、必要な資産を大きく多く見積もることになります。
そこで4%ルールは使わず、公的年金を反映したうえで95歳まで1年ずつ取り崩しをシミュレーションしました。年金はマクロ経済スライドによって実質価値が毎年0.9%ずつ目減りする前提です。
45歳で辞めるとどうなるか
家賃8.15万円・名目利回り4%・物価上昇率2%で、45歳時点の数字です。金額はすべて今日の価値に直しています。
| 45歳の資産 | 45歳で完全リタイアするのに必要な額 | 差 | |
|---|---|---|---|
| S1 節約型 | 3,783万 | 1億943万 | −7,160万 |
| S2 標準型 | 3,423万 | 1億2,024万 | −8,601万 |
| S3 ゆとり型 | 2,856万 | 1億3,740万 | −1億884万 |
10年で3,000万円台まで積み上がります。家計調査では40代の勤労者世帯の純貯蓄はマイナス111万円(貯蓄1,395万・負債1,506万)なので、この水準に届くこと自体は小さくありません。
それでも、45歳で辞めて95歳まで持たせるには足りません。45歳から65歳までの20年は年金がなく、生活費と社会保険料を全部資産から出すことになるからです。
利回りを上げても届きません
「もっと利回りの良い商品を探せばいいのでは」と考えたくなるところです。S2標準型で、名目利回りを3%・4%・5%と変えてみました。
| 名目利回り | 45歳の資産 | 必要な額 | 差 |
|---|---|---|---|
| 3% | 3,266万 | 1億4,276万 | −1億1,010万 |
| 4% | 3,423万 | 1億2,024万 | −8,601万 |
| 5% | 3,597万 | 1億300万 | −6,703万 |
利回りを3%から5%に上げても、45歳の資産は331万円しか増えません。 10年では複利が効く時間が足りないためです。
一方で必要な額は3,976万円下がります。 退職後の50年間のほうが、運用する期間として長いからです。それでも6,703万円の差が残ります。
利回りは「手元の資産を増やす」より「必要な額を下げる」側に効いています。 ただしどの利回りになるかは自分では決められません。
自分の年収と生活費で、同じ計算をしてみる
この記事の数字は、みらいコンパスの計算エンジンをそのまま使って出しています。年収・支出・資産を入れると、資産が95歳まで持つ退職年齢と、その年の資産推移が出ます。生活費がまだ曖昧な場合は、先に家計コンパスで支出を整理してから試算できます。
計算を狂わせやすい5つの点
同じような試算をするときに、結果が大きく変わってしまう箇所です。
①額面で計算してしまう
年収1,000万円の手取りは806万円です。税と社会保険料で194万円(19.4%)引かれます。額面のまま計算すると、毎年194万円ぶん楽観的になります。
②インフレを入れていない
家計調査2025では、勤労者世帯の実収入は名目で前年比+2.8%、実質では−0.9%でした。名目で増えていても実質では減っています。
この試算では物価上昇率2%を置き、金額はすべて今日の価値に直して表示しています。
③退職後の固定費を忘れている
会社を辞めると、健康保険と年金が自分負担に切り替わります。しかもこの負担は、年齢によって3段階で変わります。
| 時期 | 年額 | 内訳 |
|---|---|---|
| 60歳未満 | 61.0万円 | 国民年金43.0万(月17,920円×2人)+国民健康保険の均等割17.0万(東京23区・2人)+住民税の均等割1.0万 |
| 60〜64歳 | 18.0万円 | 国民年金の納付が終わるため下がります |
| 65歳以降 | 58.9万円 | 年金を受け取り始めると、また上がります |
見落としやすいのは3段目です。公的年金は雑所得として課税され、国民健康保険の所得割も発生します。 内訳は所得税8.6万・住民税17.3万・社会保険料33万で、合計58.9万円。
「年金をもらえば固定費は軽くなる」と考えて65歳以降を18.0万円のままで計算すると、年40.9万円を少なく見積もることになります。30年分で1,200万円を超えます。
④老後も現役と同じ生活費が続く前提で計算している
家計調査の無職世帯を見ると、消費支出は65〜69歳でいったん増えてから(教養娯楽費と交通費が伸びます)、75歳以降に落ちていきます。60〜64歳を100とすると85歳で81.4です。
現役と同じ支出が続く前提で計算すると、実態より厳しい結果になります。
⑤子なしなのに教育費が入ったままになっている
年収帯別の統計(十分位)は、世帯人員が3.3〜3.4人です。つまり子どもがいる世帯の数字で、教育費が月23,250〜29,251円含まれています。
子どもを持たない前提で使うなら、この分を除く必要があります。除かないと生活費を年28万〜35万円多く見積もることになります。
では何歳なら届くのか
家賃と生活費の水準を変えて、資産が95歳まで持つ最短の退職年齢を出しました。名目利回り4%です。
| 家賃(月) | S1 節約型 | S2 標準型 | S3 ゆとり型 |
|---|---|---|---|
| 8.15万(統計平均) | 57歳 | 59歳 | 63歳 |
| 12万(都市部2LDK) | 60歳 | 62歳 | 65歳 |
| 15万(都心2LDK) | 62歳 | 64歳 | 67歳 |
全体の幅は57〜67歳。10年の開きがあります。
自分の家賃と生活水準が交わるところを見てください。単一の答えではなく、自分がどこにいるかが分かる形にしています。
この10年の幅を何が決めているのかは、EP2「退職年齢を決めているのは、住む場所と暮らし方と運用」で扱います。
この試算が崩れる条件
可能性を示すなら、崩れる条件も同じ重さで書く必要があります。
- 物価上昇率が2%を超える(実質の利回りが下がります)
- 退職直後に暴落が来る(取り崩しの初期に起きると影響が大きく残ります)
- 2人のうち1人が働けなくなる(世帯年収1,000万円の前提が崩れます)
- 子どもを持つ選択をする(教育費が加わり、この前提は成立しなくなります)
- 家賃が上がる、または持ち家に切り替える(住居費の構造が変わります)
- 公的年金の給付水準が下がる
- 95歳より長生きする
みらいコンパスで自分の数字を入れる
この記事と同じ計算を、自分の数字で再現できます。入力で結果が大きく変わる箇所があるので、順番に挙げます。
- プロフィールに年齢を入力します
- 月収入には手取りを入れます(額面ではありません)
- 昇給率を物価上昇率と同じ2%にします。 0%のままだと、支出だけが物価で膨らんで収入が据え置きになり、実質の貯蓄余力が年々消えていきます
- 月の生活費には家賃を含めません。家賃はライフイベントの「住居計画」で賃貸として別に登録します
- 賃料上昇率に2を入力します。 未入力だと0%(横ばい)で計算され、家賃だけが実質で目減りしていくため、退職年齢が2〜5年早く出ます
- 配偶者のリタイア年齢も設定します。 未設定だと配偶者が働き続ける前提になり、大きく楽観的な結果になります
- 物価上昇率2%、実質値表示をONにします
- リタイア後の月支出は退職時点の物価で入力します(入力欄の下に、今日の金額への換算が表示されます)
- 年金は被保険者の種別を選ぶと自動で試算されます
- 期待年利は名目で3%・4%・5%の3通りを見ます
5番と6番は結果が大きく動くところなので、特に確認してください。
この記事の数字は、みらいコンパスの計算エンジンをそのまま使って出しています。同じ前提を入れれば同じ結果になります。
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