同じ2,502万円でも資産寿命が5年変わる|老後資産をどこに置くか
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- 同じ2,502万円でも、置き場所を変えるだけで資産寿命が76歳から81歳に変わる試算
- 口座種別を変えると、運用利回りが同じまま2年伸びる理由(差は税金だけ)
- NISAへの移し替えにかかるコストと、年間・生涯の枠の制約
- 資産の中身を変えると、相場の影響を受けやすくなること
前編では、60歳・金融資産2,502万円の夫婦が「働く期間と支出」を動かすと 資産が尽きる年齢が69歳から80歳まで伸びる試算を出しました。それでも1,794万円足りません。 この記事では、金額を1円も増やさずにその差をどこまで埋められるかを試算します。 モデルケースは実在しません。前提は前編と同じで、本文でも再掲します。
結論:置き場所を変えるだけで76歳が81歳になりました
| 資産が尽きる年齢 | 95歳までの必要資産 | |
|---|---|---|
| 現状(預貯金57%・有価証券は特定口座) | 76歳 | 5,219万円 |
| 有価証券をNISAに移す | 78歳 | 4,698万円 |
| 預貯金の半分を投資信託に回す | 78歳 | 4,295万円 |
| 両方 | 81歳 | 3,759万円 |
金額は2,502万円のまま、入れ物と中身を変えただけです。
とくに1行目から2行目は、運用利回りがまったく同じ(加重1.55%)まま2年伸び、必要資産が521万円下がっています。差は税金だけです。
ただし、これは無条件に得をする話ではありません。前編で「利回りを3%から7%に振っても1年しか変わらない」と書いた理由が、ここで効いてきます。
前編を読んでいない方へ:前提の再掲
60歳の夫婦(同い年)。子どもは独立、持家のローンは完済。金融資産2,502万円。
金額はすべて家計調査2025の実測値です。支出は60〜64歳が月33.0万円、65歳以降が月26.4万円。年金は65歳から2人で月22.2万円(可処分所得ベース)。インフレ率2%、想定余命95歳。
資産の内訳も実測値です。
| 置き場所 | 金額 | 想定利回り | 税金 |
|---|---|---|---|
| 預貯金 | 1,423万円(57%) | 0.2% | 利子に毎年課税 |
| 生命保険など | 453万円(18%) | 1.0% | — |
| 有価証券(特定口座の投資信託) | 626万円(25%) | 5% | 売却するまで課税されない |
| 合計 | 2,502万円 | 加重1.55% |
出所は家計調査2025 第8-5表の60〜69歳(通貨性預貯金887万・定期性預貯金648万・生命保険489万・有価証券674万)。構成比をそのまま使いました。利回りだけは筆者の設定値です。
税金を払うタイミングは、所得の種類で違います
話の前提として、ここを押さえておく必要があります。
| 所得の種類 | 税金を納めるタイミング | 根拠 |
|---|---|---|
| 利子(預貯金・債券の利子) | 支払われるたびに源泉徴収=毎年 | 国税庁 No.1310 |
| 配当(配当金・収益の分配) | 支払われるたびに源泉徴収=毎年 | 国税庁 No.1330 |
| 譲渡益(売却したときの利益) | 売却するまで納めない | 租税特別措置法37条の11/国税庁 No.1466 |
分配金を出さない投資信託を持っている間は、値上がりしていても税金を納めません。税を引かれていない金額が、そのまま次の年の元本として運用され続けます。
一方、預貯金の利子は受け取るたびに約20%が引かれます。引かれたあとの金額からしか次の利子は生まれません。
同じ利回りでも、この差が長い年月で開いていきます。
「投資なら非課税」ではありません。 利子と配当は毎年課税されたままです。 変わるのは「売却益をいつ納めるか」だけで、納める額が消えるわけではありません。
取り崩すときは「元本と利益の割合」で決まります
老後に取り崩すとき、売った金額の全部に税金がかかるわけではありません。元本部分には税金がかかりません。
手取りで100万円を使いたいとき、いくら売る必要があるかは、含み益の割合で変わります。
| 含み益の割合 | 必要な取り崩し額 |
|---|---|
| 100%(全部が利益) | 125.5万円 |
| 60% | 113.9万円 |
| 40% | 108.8万円 |
| 20% | 104.2万円 |
| 0%(全部が元本) | 100.0万円 |
※譲渡益課税20.315%で計算
含み益が大きく育っているほど、同じ生活費のために多く売ることになります。
打ち手①:口座を変える — 76歳 → 78歳
有価証券626万円を特定口座からNISAに移した場合です。
| 資産が尽きる年齢 | 必要資産 | 加重利回り | |
|---|---|---|---|
| 特定口座のまま | 76歳 | 5,219万円 | 1.55% |
| NISAへ | 78歳 | 4,698万円 | 1.55% |
利回りは1.55%のまま変わりません。 金額も同じです。それでも2年伸び、必要資産は521万円下がります。
差は、売却益への課税がなくなることだけです。NISA口座は売却益も分配金も非課税なので、取り崩すときに「手取り100万円のために113万円売る」必要がなくなります。
⚠️ ただし、移し替えは無料ではありません
ここは正直に書きます。特定口座の投資信託をNISAに「移す」ことはできません。 一度売って、NISA口座で買い直すことになります。
| 制約 | 内容 |
|---|---|
| 売却時の課税 | 売った時点で含み益に20.315%かかります。626万円のうち含み益が200万円なら、約40万円の税金 |
| 年間の枠 | 年360万円(つみたて投資枠120万+成長投資枠240万)。626万円なら2年がかり |
| 生涯の枠 | 1人1,800万円(うち成長投資枠1,200万) |
| 相場の変動 | 売ってから買い直すまでの間に価格が動きます |
この試算は、移し替えのコストを含んでいません。 アプリは資産の取得価額を「現在の残高」とみなす仕様で、含み益をゼロとして扱うためです。実際には上の表のぶんだけ目減りします。
つまり78歳という数字は、移し替えが完了した後の姿です。今から動く人は、まず売却時の税金を見積もってください。
打ち手②:中身を変える — 76歳 → 78歳
預貯金1,423万円の半分(712万円)を投資信託に回した場合です。
| 資産が尽きる年齢 | 必要資産 | 加重利回り | |
|---|---|---|---|
| 現状(預貯金57%) | 76歳 | 5,219万円 | 1.55% |
| 預貯金の半分を投信へ | 78歳 | 4,295万円 | 2.91% |
2年伸び、必要資産は924万円下がります。
⚠️ これはリスクを増やす行為です
利回りが1.55%から2.91%に上がったのは、値動きを受け入れた結果です。前編で見た「利回りを振っても結果が動かない」という性質が、ここで変わります。
| 資産構成 | 利回り3% | 5% | 7% | 幅 |
|---|---|---|---|---|
| 現状(預貯金57%) | 76歳 | 76歳 | 77歳 | 1年 |
| 投信を増やした後 | 77歳 | 78歳 | 81歳 | 4年 |
上振れも下振れも大きくなります。 前編で「相場より働く期間と支出が効く」と書きましたが、それは値動きする資産が25%しかない持ち方だからでした。投信を増やせば、相場の影響を受けるようになります。利回り3%なら77歳で、増やす前とほとんど変わりません。
どちらが良いという話ではありません。資産寿命を延ばすことと、結果のブレを小さくすることは、同時には満たせないというだけです。
60歳から取り崩しが始まる人にとって、受け取り始めた直後の下落はとくに重く効きます。現金をどれだけ手元に残すかは、別に決める必要があります。
両方やると81歳、前編の打ち手と合わせると86歳
| 資産が尽きる年齢 | 必要資産 | 不足 | |
|---|---|---|---|
| 現状 | 76歳 | 5,219万円 | 2,717万円 |
| 口座を変える | 78歳 | 4,698万円 | 2,196万円 |
| 中身を変える | 78歳 | 4,295万円 | 1,793万円 |
| 両方 | 81歳 | 3,759万円 | 1,257万円 |
| 前編の3つと合わせる | 86歳 | 3,126万円 | 624万円 |
前編の打ち手(60〜69歳まで働く/65歳以降の支出を月24万円に)と組み合わせた場合の年次です。
| 年齢 | 支出(医療費込み) | うち医療費 | 年金 | 就労 | 取り崩し | 残高 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 60歳 | 396.0万 | 0 | 0 | 115.0万 | 281.0万 | 2,293万 |
| 64歳 | 396.3万 | 0 | 0 | 106.2万 | 289.2万 | 1,250万 |
| 65歳 | 335.1万 | 47.1万 | 255.4万 | 56.2万 | 23.5万 | 1,251万 |
| 69歳 | 334.7万 | 46.9万 | 246.0万 | 51.9万 | 36.8万 | 1,218万 |
| 75歳 | 316.5万 | 29.0万 | 234.8万 | 0 | 81.7万 | 873万 |
| 80歳 | 317.0万 | 28.9万 | 235.5万 | 0 | 81.4万 | 536万 |
| 85歳 | 454.1万 | 29.3万 | 235.3万 | 0 | 218.8万 | 28万 |
| 86歳 | 407.0万 | 29.3万 | 235.4万 | 0 | 28.7万 | 0 |
※現在価値(今の物価に換算した金額)。支出欄は医療費を含んだ合計です。
65〜69歳は取り崩しが年24〜37万円で収まり、資産はほぼ横ばいです(1,251万 → 1,218万)。年金と就労収入の合計が、月24万円に抑えた支出にほぼ届くためです。
85歳で支出が跳ねるのは介護費です(在宅 月7.5万円×5年を想定)。
不足は624万円。前提が続けば、という条件付きですが、手が届く範囲に近づく可能性はありそうです。
崩れる条件
| 条件 | 影響 |
|---|---|
| 相場が想定を下回る | 投信を増やした構成では、利回り3%なら77歳(5%なら78歳)。増やす前とほとんど変わらなくなります |
| 受け取り始めた直後に下落する | 取り崩しながらの下落は回復が難しくなります |
| NISAへの移し替えで税金が出る | この試算に含まれていません。含み益のぶん目減りします |
| 働けなくなる | 前編の前提(69歳まで就労)が崩れます |
この試算に含まれていないこと
- 移し替えのコスト(売却益への課税・買付手数料・価格変動)
- 含み損の繰越控除。アプリは下落後の回復分を利益として課税する保守的な扱いです
- 取得価額の実額。現在の残高を取得価額とみなすため、長く持って含み益が大きい人の実際の税負担は、この試算より大きくなります
とくに最後の点は、今回の試算が楽観側にずれている箇所です。含み益が大きい方ほど、実際の取り崩しは重くなります。
まとめ:順番としては最後です
| 順番 | 打ち手 | 伸びる年数 |
|---|---|---|
| 1 | 働く期間を決める(前編) | +7年 |
| 2 | 65歳以降の支出を決める(前編) | +4年 |
| 3 | 資産の中身を決める | +2年 |
| 4 | 口座種別を決める | +2年 |
前編の2つが先に来るのは、確実性が違うからです。働く期間と支出は自分で決められますが、資産の中身を変えることは相場に結果を委ねる行為です。
前編で扱った年金の繰下げは、この順番とは別の軸にあります。資産が尽きる年齢は縮みますが、必要資産を最大1,179万円下げます。長生きへの備えとして、上の4つとは独立に判断する打ち手です。
一方で、口座種別を変えることはリスクを増やしません。同じ資産を非課税の入れ物に入れ替えるだけで、利回りは変わらないまま2年伸び、必要資産が521万円下がります。移し替えのコストと枠の制約を確認したうえでなら、先に手を付けてよい打ち手です。
自分の口座種別を確認する手順
みらいコンパスの「収入・支出・資産」ページで、資産ごとに口座種別(特定口座・NISA・iDeCo)を設定できます。種別を変えて試算し直すと、この記事と同じ比較が自分の金額でできます。
| 入力欄 | この記事の値 |
|---|---|
| 預貯金 | 1,423万円(0.2%) |
| 生命保険など | 453万円(1.0%) |
| 有価証券 | 626万円(5%・特定口座/NISA) |
そのままにしておく項目:インフレ率2%・想定余命95歳・年金改定モード「物価連動 − マクロスライド調整(推奨)」。医療費は計上するチェックを入れたままにしてください(自己負担の割合は年齢と所得から自動で判定されます)。
必要資産はアプリの必要資産ラインの値を使っています。アプリには別の画面にも目標額があり、算出方法が違うため数字がずれます。
→ 前編:60歳・資産2,502万円。何もしなければ69歳で尽きる試算でした → 各方式の仕組み:定額・定率・バケツ・4%ルールの違い
本記事の数値は、みらいコンパスと同じ計算コードを読み込んで出した結果です。前提の出所は本文に記載しています。 本記事は情報提供であり、投資助言ではありません。 税制・NISA制度の取り扱いは変更される場合があります。 具体的な売却・買付の判断は、ご自身の含み益や所得の状況に応じて、必要に応じて専門家にご相談ください。
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