教育費と老後の両立:足りないのは私立大学が重なる2年だけ|子育て世帯の教育費試算 EP4

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教育費と老後の両立:足りないのは私立大学が重なる2年だけ|子育て世帯の教育費試算 EP4

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このシリーズについて

夫42歳・妻40歳の共働き、子ども2人(長子が中学2年・次子が小学5年)、持ち家でローン返済中というモデルケースで、教育費を払いながら老後も用意できるのかを、文部科学省と総務省の統計から試算しています。全4回の最終回です。

本ケースは実在の個人ではなく、統計をもとに構成したモデルケースです。

目次

結論から:足りなくなるのは12年のうち2年だけ

結論を先に置きます。公立高校から国立大学というルートなら、教育費で貯蓄がマイナスになる年は1年もありません。 私立大学を2人分となると、2年だけ足りない年が出ます。

年 長子 次子 教育費(私立大ルート) その年に使える額 差
夫47歳 大学1年 高校1年 2,152,943円 2,064,384円 −88,559円
夫50歳 大学4年 大学1年 2,774,930円 1,944,384円 −830,546円

いちばん厳しいのは夫50歳の年です。 長子が大学4年、次子が大学1年。次子の入学金が乗ったうえで、長子の授業料がまだ続いています。この年だけで約83万円足りません。月に直すと約6万9,000円です。

そして12年分を平均すると、この2年は見えなくなります。年単位で並べないと出てこない不足です。

老後のほうはこうなります。夫60歳時点の金融資産(実質・現在の価値)です。

実質利回り 公立+国立 公立+私立大 参考:教育費が終わってから積み始めた場合
1% 4,876万円 4,245万円 3,217万〜3,318万円
2% 5,429万円 4,740万円 3,568万〜3,679万円
3% 6,065万円 5,312万円 3,978万〜4,099万円

教育費の12年間に積立を止めるかどうかで、1,028万〜1,966万円の差がつきます。 以下、この数字の出し方を順に開きます。

「大学まで出したら、老後には何も残らないのでは」

EP1からEP3で、子ども2人にかかる金額と、その山がいつ来るかが出ました。公立中学3年の塾代、高校1年の入学時の出費、そして大学。

残るのは、この山を越えながら老後の資金も積めるのかという問いです。「教育費が終わってから老後の準備をすればいい」と考えたくなりますが、教育費が終わるのが何歳なのかを、まだ数えていませんでした。

前提を全部開きます

項目 値 出所
実収入 737,544円/月 総務省「家計調査」2025年・夫婦と子供の世帯・夫40〜44歳
非消費支出(税・社会保険料) 140,430円/月 同上
消費支出 344,788円/月(うち教育22,677円) 同上
住宅ローン返済 92,971円/月 同「家計調査」第3-7表・全国・持ち家でローン返済中
金融資産(起点) 1,395万円 同「家計調査」貯蓄・負債編 2025年・世帯主40〜49歳の貯蓄現在高
住宅ローン残高 1,423万円 同上(負債のうち住宅・土地)
幼稚園〜高校の教育費 学年別の公表値 文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」令和8年1月16日訂正版
大学の費用 国立243万円/私立531万円(4年) 文部科学省 標準額/「私立大学等入学者に係る学生納付金等調査」令和7年度
児童手当 10,000円/月・1人(高校生年代まで) こども家庭庁
実質利回り 1%/2%/3% 名目3〜5%・インフレ2%(日本銀行の物価安定の目標)

この試算の「教育費」には、習い事を含めていません。 家計調査ではスポーツや音楽の習い事は「教養娯楽」に分類され、消費支出の側にすでに入っているためです(EP3で見た分類の違いです)。二重に数えないよう、教育費としては学校教育費・給食費・補助学習費(塾・通信教育・家庭教師・家庭内学習)までを数えました。習い事を足すと12年間で約94万円増えます。

金額はすべて実質(いまの価値)です。物価上昇は収入・支出・利回りのすべてに同率で効くものとして扱っています。

まず、1年にいくら使えるのか

収入から順に引いていきます。

項目 月 年
実収入 737,544円 8,850,528円
− 非消費支出(税・社会保険料) 140,430円 1,685,160円
= 可処分所得 597,114円 7,165,368円
− 生活費(消費支出から教育費目を除く) 322,111円 3,865,332円
− 住宅ローン返済 92,971円 1,115,652円
= 教育費と貯蓄に使える額 182,032円 2,184,384円

年に218万4,384円。この中から教育費を払い、残りを積み立てます。

住宅ローンの返済は、家計調査の消費支出に含まれていません。 返済は「財産純増」に計上されるためです。消費支出だけで家計を組むと、持ち家でローンを返している世帯の支出を月9万円ほど少なく見積もることになります。この試算では第3-7表の実測を別に引いています。

なおこの9万2,971円はすでに借りている人の実測値です。これから借りる場合、2026年の金利では同じ借入額でも返済額が大きくなります。

この218万円は、途中で2回減ります。児童手当がなくなるからです。 家計調査の実収入には児童手当などの社会保障給付が含まれています。

  • 長子が高校を卒業する夫47歳から、月1万円減って年206万4,384円
  • 次子が高校を卒業する夫50歳から、さらに月1万円減って年194万4,384円

教育費が終わるのは、夫53歳

子どもの学年を年ごとに並べます。公立高校から国立大学というルートです。

夫の年齢 長子 次子 教育費 使える額 積立に回る額
42歳 中2 小5 621,867円 2,184,384円 1,562,517円
43歳 中3 小6 863,351円 2,184,384円 1,321,033円
44歳 高1 中1 1,084,701円 2,184,384円 1,099,683円
45歳 高2 中2 918,603円 2,184,384円 1,265,781円
46歳 高3 中3 1,021,082円 2,184,384円 1,163,302円
47歳 大1 高1 1,463,096円 2,064,384円 601,288円
48歳 大2 高2 1,073,071円 2,064,384円 991,313円
49歳 大3 高3 1,005,453円 2,064,384円 1,058,931円
50歳 大4 大1 1,353,600円 1,944,384円 590,784円
51歳 — 大2 535,800円 1,944,384円 1,408,584円
52歳 — 大3 535,800円 1,944,384円 1,408,584円
53歳 — 大4 535,800円 1,944,384円 1,408,584円
54歳〜 — — 0円 1,944,384円 1,944,384円

教育費がかかるのは12年間。終わるのは夫53歳です。 12年の合計は1,101万円。山は2つあり、1つめは夫47歳(長子の大学入学と次子の高校入学が重なる年)、2つめは夫50歳です。

このルートでは、積立に回る額がいちばん少ない年でも59万784円。ゼロにはなりません。

私立大学が2人重なると、2年だけ逆転します

大学を私立にすると、同じ表がこうなります。

夫の年齢 長子 次子 教育費 使える額 積立に回る額
46歳 高3 中3 1,021,082円 2,184,384円 1,163,302円
47歳 大1 高1 2,152,943円 2,064,384円 −88,559円
48歳 大2 高2 1,804,554円 2,064,384円 259,830円
49歳 大3 高3 1,736,936円 2,064,384円 327,448円
50歳 大4 大1 2,774,930円 1,944,384円 −830,546円
51歳〜53歳 — 大2〜大4 1,267,283円 1,944,384円 677,101円

12年の合計は1,678万円。国立ルートとの差は577万円で、これは大学の公私の差288万円の2人分にあたります。

注目したいのは、不足が「平均では消える」ことです。 12年の積立合計は811万円でプラス。年平均にすると67万円の黒字です。それでも、夫47歳と夫50歳の2年だけはマイナスになります。

この2年をどうするかは、事前に決めておけることです。その前の年に多めに残しておく、学資保険や定期を満期に合わせる、あるいは大学の1年目だけ借りる。 どれを選ぶにせよ、47歳と50歳だと分かっているかどうかで打ち手の幅が変わります。

60歳時点でいくらになるか

起点は金融資産1,395万円(40代の貯蓄現在高の実測)。ここに毎年の積立を足し、実質利回りで運用した場合の夫60歳時点の金額です。

実質利回り A 12年間も積み立てる
(公立+国立)
A 12年間も積み立てる
(公立+私立大)
B 教育費が終わってから積む
1% 4,876万円 4,245万円 3,318万円/3,217万円
2% 5,429万円 4,740万円 3,679万円/3,568万円
3% 6,065万円 5,312万円 4,099万円/3,978万円

Bは「教育費がかかっているあいだは積み立てず、終わってから始める」という置き方です(不足した年は資産から取り崩します)。差は国立ルートで1,558万〜1,966万円、私立ルートで1,028万〜1,334万円になります。

理由は期間です。 教育費が終わるのは夫53歳で、60歳まで6年しかありません。12年を捨てると、残るのは6年です。

住宅ローンの完済が、最後の4年を押し上げます

残高1,423万円を月9万2,971円で返していくと、金利1.0〜1.5%のいずれでも13.7〜14.2年=夫56歳ごろに完済する計算になります。その後は返済額がそのまま浮きます。

時期 積立に回せる額(教育費がない場合)
夫54歳〜55歳 1,944,384円/年
夫56歳〜59歳 3,060,036円/年

完済後の4年は、年306万円を積める計算です。教育費が終わる時期と、ローンが終わる時期が3年ずれて並びます。

では、いくら必要なのか

必要額は条件で大きく動くので、幅のある物差しとして置きます。いずれも家計調査と公的統計の実測値です。

時期 内容 金額
60〜64歳 無職世帯の赤字 月111,879円 × 5年 671万円
65〜94歳 夫婦高齢者無職世帯の不足 月42,435円 × 30年 1,528万円
85歳〜 介護費(認定率57.7%を掛けた期待値〜2人分) 624万〜1,248万円
合計の目安 2,823万〜3,447万円

この物差しで見ると、A(12年間も積み立てる)はどのルート・どの利回りでも届きます。 B(教育費が終わってから積む)は、3,217万〜4,099万円で、目安の幅の中に入ります。届く場合と届かない場合に分かれる位置です。

ここには退職金を入れていません。大学・大学院卒の定年退職者の平均は1,896万円ですが、退職給付制度がある企業は74.9%で、従業員30〜99人の企業では70.1%です。あるかないかは勤め先で確認するほかありません。

この世帯は共働きなので、年金は平均より大きくなる見込みです。 上の物差しに使った「夫婦高齢者無職世帯」の可処分所得は月22万1,544円ですが、共働きで2人とも厚生年金に加入していた場合、夫婦合計で年345万〜499万円(月28万〜41万円)という試算になります。その分、必要額は小さくなる方向です。

また60〜64歳に働くかどうかで671万円が変わります。 家計調査の60〜64歳の勤労者世帯は、可処分所得45万180円に対して消費支出35万4,243円で、取り崩しが発生していません。「60歳で収入ゼロ」は統計のどこにも出てこない姿です。

この試算が崩れる条件

  • 収入も支出も家計調査の平均です。 実収入73万7,544円は夫40〜44歳の平均で、児童手当などの社会保障給付を含みます。自分の手取りで置き直すと結果は動きます
  • 生活費を18年間ずっと同じに置いています。 子どもが独立すれば食費も光熱費も下がるはずで、この試算は積立額を少なめに見積もっています
  • 住宅ローンの残高と返済額は別々の表から取っています。 残高は貯蓄・負債編の40代平均、返済額は第3-7表の持ち家ローン返済中。同一世帯の数字ではありません。完済時期は目安です
  • 教育費は学年別の平均です。 EP3のとおり、塾に通わせるかどうかで公立中学校だけでも年23万円動きます。受験費用と、自宅外通学の仕送り・住居費は入っていません
  • 学習費調査は2023年度の金額です。 実質で揃えていますが、教育費だけが物価より速く上がれば足りなくなります
  • 利回りは一定で置いています。 実際には変動し、取り崩し期の直前に下落すると結果が大きく変わります
  • 介護は85歳からの10年で置きました。 実際の介護期間の平均は4年7ヶ月で、始まる年齢も人によります。2人同時に必要になる確率は低いので、2人分は上限として扱っています
  • 高等教育の修学支援新制度は、この世帯では対象外です。 子ども2人の世帯は年収約600万円までが対象で、扶養する子が3人以上なら所得制限なしで支援されます
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自分の収入で、どの年が足りなくなるかを見る

足りないのは12年のうち2年。その2年がいつかは、子どもの生年と進路で動きます。みらいコンパスに収入・支出・子どもの生年・住宅ローンを入れると、年ごとの資産推移と、足りなくなる年が出ます。いま毎月いくら使っているかが曖昧な場合は、先に家計コンパスで支出を整理してから試算できます。

みらいコンパスで試算する →先に家計コンパスで支出を整理する →

みらいコンパスで自分の数字を入れる

この記事の金額は統計の平均値です。自分の条件で見るには、次のように入れます。

  1. 住宅ローンの返済額を、消費支出とは別に入れます。 家計調査の消費支出には返済が含まれません。ここを忘れると月9万円ぶん楽に見えます
  2. 子どもの生年を2人とも登録し、進路を学校種まで選びます。 大学の公私で12年の合計が577万円変わります
  3. 教育費は学年別で入れます。 公立中学3年は学校外活動費だけで年44万6,096円、高校1年は学習費総額が年70万240円。学校種の平均では、足りなくなる年が消えます
  4. 児童手当が切れる年を入れます。 高校卒業で1人あたり月1万円の収入が消えます。このケースでは夫47歳と50歳です
  5. 介護費は手入力です。 医療費は年齢に応じて自動で上乗せされますが、介護費は既定でゼロです。85歳からの10年を月5万〜10万円で入れると、上の物差しと揃います
  6. 物価上昇率は2%、実質値表示をONにします

1番と3番が、この記事でいちばん結果を動かす項目です。どちらも「平均を入れると足りなくなる年が消える」という同じ構造です。

この記事の金額はすべて、文部科学省・総務省・厚生労働省・こども家庭庁が公表している統計の値です。出所は前提表に記載しています。同じ資料にあたれば、同じ数字が出ます。

シリーズのまとめ
  • EP1 子ども2人を大学まで出すと1,713万〜3,246万円。進路で1,533万円動く
  • EP2 高校無償化で増えるのは年33万8,400円。公立高校なら0円
  • EP3 公立中学校の塾代は年23万385円で、私立中学校より高い
  • EP4 教育費が終わるのは夫53歳。足りない年は12年で2回
  • 番外編 3人きょうだいの支援は、年齢差で365万円変わる

4回を通して出てきたのは、平均を使うと見えなくなるものがあるということでした。高校無償化の「増える額」、公立中学校の塾代の分布、そして足りなくなる年。どれも年ごと・学年ごとに並べて初めて出てきます。

子ども3人の世帯は受けられる制度が違うので、番外編で別のケースとして扱っています。

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