3人きょうだいの支援は年齢差で365万円変わる|子育て世帯の教育費試算 番外編
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文部科学省と総務省の統計から教育費を試算するシリーズの番外編です。本編(EP1〜EP4)は子ども2人のモデルケースですが、この回は子ども3人の別のケースを扱います。 受けられる制度が根本的に違うため、同じ記事にまとめていません。
- EP1 総額:大学まででいくらかかるのか
- EP2 高校無償化で、いくら楽になるのか
- EP3 「公立なら安い」は本当か
- EP4 教育費と老後は両立するか
- 番外編 3人目で制度が変わる(この記事)
本ケースは実在の個人ではなく、制度の条件をもとに構成したモデルケースです。
結論から:同じ3人きょうだいでも、年齢差で365万円違います
2025年度(令和7年度)から、扶養する子どもが3人以上の世帯は、所得制限なしで大学の授業料と入学金が支援されるようになりました。私立大学なら授業料が年70万円、入学金が26万円までです。
ただしこの支援には条件があります。「3人以上を同時に扶養している間」だけです。上の子が卒業して就職すると、下の子の支援も終わります。
つまりきょうだいの年齢差で、受けられる年数が変わります。 2歳差と4歳差で並べると、こうなります。
| 子ども(私立大学) | 年齢差2歳 | 年齢差4歳 |
|---|---|---|
| 長子 | 4年分 3,040,365円 | 4年分 3,040,365円 |
| 次子 | 3.5年分 2,690,365円 | 1.5年分 1,290,365円 |
| 三子 | 1.5年分 1,290,365円 | 0円 |
| 合計 | 約702万円 | 約433万円 |
差は約269万円。 これに児童手当の差(後述の約96万円)を足すと、約365万円になります。
そして「3人きょうだいなら3人とも4年間無償」と置くと、支援額は912万円になります。4歳差のケースでは、実際との差が約575万円です。
3人目を考えるとき、制度は味方に見えます
「3人目を持つと、大学が無償になるらしい」。そう聞いて調べ始めると、確かに文部科学省の資料に「所得制限なし」「授業料70万・入学金26万」と大きく書いてあります。
所得で切られないというのは、これまでの支援制度とは違う点です。年収がいくらでも対象になる。では、3人とも大学を出るまで続くのか。 そこを確かめます。
前提を全部開きます
| 項目 | 値 | 出所 |
|---|---|---|
| 多子世帯の支援上限(私立大学) | 入学金26万円/授業料 年70万円 | 文部科学省「令和7年度からの多子世帯への授業料等無償化に係るFAQ」問4-1 |
| 同(国公立大学) | 入学金28万円/授業料 年54万円 | 同上 |
| 所得制限 | なし | 同 問1 |
| 対象の条件 | 3人以上を同時に扶養している間 | 同 問3-2 |
| 扶養の判定時点 | 毎年10月に前年12月31日時点で確認 | 同 問3-5 |
| 私立大学の実額 | 入学料240,365円/授業料968,069円(年) | 文部科学省「私立大学等入学者に係る学生納付金等調査」令和7年度入学者 |
| 児童手当 | 第3子以降30,000円/第1・2子10,000円(月) | こども家庭庁 |
| 児童手当の「兄姉等」 | 22歳に達する日以後の最初の3月31日まで | 同上 |
| 子の年齢設定 | 長子が大学1年のとき、2歳差/4歳差の2ケース | 設定値 |
この記事では世帯年収を置いていません。 多子世帯の授業料等無償化も、2024年10月以降の児童手当も、どちらも所得制限がないためです。年収がいくらでも結果は変わりません。
ただし多子世帯でなくなった後は、所得で判定される通常の支援区分に戻ります。 文部科学省の資料によれば、両親・子ども3人(本人・高校生・中学生)の世帯で第IV区分までの対象になるのは世帯年収約680万円が目安です。それを超えていれば、多子世帯から外れた時点で支援はゼロになります。
支援は「3人同時に扶養している間」だけです
文部科学省のFAQに、条件がはっきり書かれています。
子供を3人以上同時に扶養している間に、大学等に在学している子供は全員対象となります。(中略)なお、第1子が卒業等により扶養から外れ、扶養する子供の数が2人となった場合は、本制度における「多子世帯」ではなくなるため、多子世帯としての支援は終了します。
「3人きょうだいだから」ではなく「いま3人を扶養しているから」という制度です。長子が就職して扶養から外れた時点で、まだ大学に通っている下の子の支援も終わります。
ただし、1年半のずれがあります
判定は税情報で行われ、毎年10月に前年12月31日時点の扶養状況を確認します。このため卒業してすぐ切れるわけではありません。同じFAQにこう書かれています。
第1子が大学を3月に卒業し、4月に就職した場合、当該4月に支援対象から外れることはありません。(中略)一般的に、令和8年3月に卒業した第1子がいる場合、第2子以下は令和9年9月までは多子世帯と判定され、支援対象となり得ます。
つまり長子が卒業した年度の翌年度は通年、翌々年度は9月(前期)まで支援が続きます。この記事の試算もこの置き方に合わせています。
年齢差2歳と4歳で、年表がこう変わります
長子が大学1年になる年度を「1年目」として並べます。長子は4年で卒業し、翌年4月に就職するという前提です。
年齢差2歳の場合
| 年度 | 長子 | 次子 | 三子 | 支援 |
|---|---|---|---|---|
| 1〜2年目 | 大1〜大2 | 高2〜高3 | 中3〜高1 | 長子のみ対象 |
| 3〜4年目 | 大3〜大4 | 大1〜大2 | 高2〜高3 | 長子・次子 |
| 5年目 | 就職 | 大3 | 大1 | 次子・三子(通年) |
| 6年目 | — | 大4 | 大2 | 9月まで |
| 7年目以降 | — | — | 大3〜大4 | 対象外 |
長子は4年分、次子は3.5年分、三子は1.5年分。合計9年分です。
年齢差4歳の場合
| 年度 | 長子 | 次子 | 三子 | 支援 |
|---|---|---|---|---|
| 1〜4年目 | 大1〜大4 | 中3〜高3 | 小5〜中2 | 長子のみ対象 |
| 5年目 | 就職 | 大1 | 中3 | 次子(通年) |
| 6年目 | — | 大2 | 高1 | 9月まで |
| 7〜8年目 | — | 大3〜大4 | 高2〜高3 | 対象外 |
| 9年目以降 | — | — | 大1〜大4 | 一度も対象にならない |
長子は4年分、次子は1.5年分、三子は0年分。 合計5.5年分です。
三子が大学に入るころには、長子も次子も扶養から外れています。 扶養しているのは三子だけなので、多子世帯ではありません。「3人きょうだい」であることは変わらないのに、制度上はそうなります。
児童手当の「第3子」も固定ではありません
同じ構造が児童手当にもあります。こども家庭庁の説明では、「第3子以降」は児童および児童の「兄姉等」のうち、年齢が上の子から数えて3人目以降です。
この「兄姉等」には年齢の上限があります。22歳に達する日以後の最初の3月31日までで、かつ親等に経済的負担のある子に限られます。
つまり長子が22歳の年度末を過ぎると、カウントから外れます。 すると三子は「第3子」から「第2子」に繰り上がり、月30,000円が10,000円になります。
| 年齢差2歳 | 年齢差4歳 | |
|---|---|---|
| 三子が第3子として受け取る期間 | 48ヶ月 | 48ヶ月 |
| 第2子に下がってからの期間 | 0ヶ月 | 48ヶ月 |
| 実際の受取額 | 1,440,000円 | 1,920,000円 |
| 「ずっと3万円」と置いた場合 | 1,440,000円 | 2,880,000円 |
| 差 | 0円 | 960,000円 |
2歳差では差が出ません。三子が18歳の年度末を迎えるのと、長子が22歳の年度末を迎えるのが同じ年になるためです。4歳差では三子がまだ中学生・高校生のうちに長子がカウントから外れるので、4年分が月1万円に下がります。
満額支援でも、私立大学では年56万7,000円が残ります
支援額には上限があります。私立大学の授業料の上限は年70万円ですが、実際の平均授業料は96万8,069円です。施設設備費や実験実習料は、そもそも支援の対象ではありません。
| 私立大学(平均) | 納付額 | 支援 | 残る自己負担 |
|---|---|---|---|
| 初年度(入学料含む) | 1,507,647円 | 940,365円 | 567,282円 |
| 2年目以降(年) | 1,267,283円 | 700,000円 | 567,283円 |
| 4年合計 | 5,309,496円 | 3,040,365円 | 2,269,131円 |
満額の支援を4年間受けても、1人あたり約227万円が残ります。 支援上限は平均額を考慮して設定されているという説明が資料にあり、平均を上回る学校ではさらに残ります。
国立大学なら授業料の標準額535,800円は上限54万円の範囲に収まるので全額が支援され、入学料282,000円のうち上限28万円を超える2,000円だけが残ります。公私の差は、支援を受けてもそのまま残ります。
この試算が崩れる条件
- 学生本人のアルバイト収入で、下の子の支援まで消えることがあります。 19歳以上23歳未満なら給与収入160万円(2025年分)・169万円(2026年分)を超えると「扶養する子供」に数えられなくなり、3人を割ります
- 大学院に進学して扶養が続く場合は、人数に数えられます。 大学院生自身は支援の対象外ですが、下の子の支援は続きます
- 長子が就職せず扶養が続けば、期間は延びます。 この試算は「4年で卒業して翌4月に就職」という前提です
- 留年すると支援の対象から外れます。 修業年限で卒業できないことが確定した場合が対象外です(災害・傷病などやむを得ない事由は除く)
- 海外の大学は授業料等減免の対象外です。 ただし扶養していれば人数にはカウントされます
- 判定は税情報で行われます。 この記事の年齢設定は目安で、実際は前年または前々年の12月31日時点の扶養状況によります
- 多子世帯から外れた後は、所得で判定される通常の区分に戻ります。 両親・子ども3人(本人・高校生・中学生)で第IV区分までの対象は世帯年収約680万円が目安です
- 自動では支援されません。 日本学生支援機構の給付型奨学金への申込みが必要です
3人分の学費が、どの年に重なるかを見る
支援が続く年と切れる年は、きょうだいの生年で決まります。みらいコンパスに3人の生年と進路を入れると、年ごとの支出と資産の推移が出ます。支援が切れた後に残る自己負担(私立大学で年約57万円)も、そのまま入れて試算できます。
みらいコンパスで自分の数字を入れる
この記事の金額は制度の上限と統計の平均値です。自分の条件で見るには、次のように入れます。
- 3人の生年を正確に登録します。 年齢差で支援の年数が変わるので、ここがいちばん効きます
- 支援される年は「残る自己負担」だけを入れます。 私立大学なら年約57万円。授業料の全額を入れると二重に見積もります
- 支援が切れる年を決めます。 長子が卒業して就職した年度の翌年度までは通年、翌々年度は9月まで。それ以降は全額を入れます
- 児童手当は、長子が22歳の年度末を過ぎる年から月1万円に下げます。 三子がまだ18歳の年度末前なら、ここで月2万円減ります
- 物価上昇率は2%、実質値表示をONにします
2番と3番が、この記事でいちばん間違えやすいところです。「無償化」という言葉から全額ゼロと置くと、1人あたり4年で約227万円を見落とします。
この記事の制度の内容はすべて、文部科学省とこども家庭庁が公表している資料の記載によります。出所は前提表に記載しています。制度は変わることがあるので、申込みの前に最新の資料を確認してください。
- EP1 子ども2人を大学まで出すと1,713万〜3,246万円
- EP2 高校無償化で増えるのは年33万8,400円。公立高校なら0円
- EP3 公立中学校の塾代は年23万385円で、私立中学校より高い
- EP4 教育費が終わるのは夫53歳。足りない年は12年で2回
- 番外編 3人きょうだいの支援は、年齢差で365万円変わる
5回を通して出てきたのは、制度の名前ではなく条件を読むと金額が変わるということでした。「無償化」も「第3子以降」も、適用される期間が決まっています。
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