公立中学校の塾代は年23万385円、私立より高い|子育て世帯の教育費試算 EP3
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夫42歳・妻40歳の共働き、子ども2人(長子が中学2年・次子が小学5年)、持ち家でローン返済中というモデルケースで、教育費を払いながら老後も用意できるのかを、文部科学省と総務省の統計から試算しています。全4回のうち第3回です。
- EP1 総額:大学まででいくらかかるのか
- EP2 高校無償化で、いくら楽になるのか
- EP3 「公立なら安い」は本当か(この記事)
- EP4 教育費と老後は両立するか
- 番外編 3人目で制度が変わる(子ども3人の別ケース)
本ケースは実在の個人ではなく、統計をもとに構成したモデルケースです。
結論から:公立中学校の塾代は年23万385円で、私立中学校より高い
文部科学省の学習費調査には「学習塾費」という項目があります。学校種別に並べると、中学校だけ公私が逆転します。
| 学校種 | 公立 | 私立 |
|---|---|---|
| 幼稚園 | 14,167円 | 25,261円 |
| 小学校 | 75,194円 | 259,492円 |
| 中学校 | 230,385円 | 168,058円 |
| 高等学校(全日制) | 147,140円 | 166,867円 |
公立中学校のほうが年6万2,327円多いという結果です。文部科学省の資料にも「中学校では私立より公立が多く」と明記されています。
そしてもう一つ。この23万385円という平均額は、実際にどこかの家庭が払っている金額ではありません。
| 公立中学校の学習塾費(年額) | 世帯の割合 |
|---|---|
| 0円 | 34.0% |
| 1円〜30万円未満 | 32.8% |
| 30万〜40万円未満 | 10.0% |
| 40万円以上 | 23.3% |
(割合は四捨五入のため合計が100%になりません)
3分の1は0円、4分の1近くは年40万円以上。 1円以上払っている世帯だけで平均すると、年34万9,000円になります。平均の23万円は、この二つの山のあいだにある数字です。
以下、この数字が家計のどこに効いてくるかを順に見ます。
「公立にしたから、そこは抑えられる」と思っていた
前回、高校を私立にした場合に増える支援金が年33万8,400円、公立なら0円だと分かりました。それなら公立で、と話はいったん落ち着きました。
ただ、長子はもう中学2年の秋で、週3回の塾に通っています。月謝と講習費を足すと、年単位でそれなりの金額になっている。次子も来年には同じ道をたどるはずです。
公立にすれば学校に払う額は抑えられる。では、学校に払わない分はどうなのか。 そこを統計で開きます。
前提を全部開きます
| 項目 | 値 | 出所 |
|---|---|---|
| 学習費総額・内訳 | 公立小366,599円/公立中542,450円(年) | 文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」令和8年1月16日訂正版 |
| 学習塾費・補助学習費 | 学年別・学校種別の公表値 | 同調査「調査結果の概要」表5・表6・表8-2 |
| 世帯年収別の補助学習費 | 同調査 表10-2 | 同上 |
| 世帯の収入 | 実収入737,544円/月 | 総務省「家計調査」2025年・夫婦と子供の世帯・夫40〜44歳 |
| 世帯の教育費支出 | 22,677円/月 | 同上 |
公立中学校は、学校に払う額より塾・習い事のほうが大きい
学習費総額は3つに分かれます。学校教育費(授業料や教材費など学校に払うもの)、学校給食費、学校外活動費(塾・習い事・家庭学習)です。公立で並べると、こうなります。
| 公立 | 学習費総額 | 学校教育費 | 給食費 | 学校外活動費 | 学校外の比率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 小学校 | 366,599円 | 74,336円 | 35,774円 | 256,489円 | 70.0% |
| 中学校 | 542,450円 | 150,761円 | 35,671円 | 356,018円 | 65.6% |
| 高等学校(全日制) | 596,954円 | 351,523円 | — | 245,431円 | 41.1% |
公立小学校と公立中学校では、学校に払う額より、学校の外に払う額のほうが大きいという結果です。小学校では7割、中学校では3分の2がここに入ります。
「公立なら安い」は、学習費総額で見れば事実です。公立中学校の54万2,450円に対し、私立中学校は156万359円。2.9倍の差があります。ただしその差は学校教育費の差であって、学校の外では縮みます。
中学校では、学校外活動費の中身も変わる
学校外活動費は「補助学習費」(塾・通信教育・家庭教師・家庭内学習)と「その他の学校外活動費」(スポーツ・芸術文化・体験活動などの習い事)に分かれます。公立中学校では前者が圧倒的です。
| 公立 | 学校外活動費 | うち補助学習費 | 構成比 | うちその他(習い事) |
|---|---|---|---|---|
| 小学校 | 256,489円 | 112,485円 | 43.9% | 144,004円 |
| 中学校 | 356,018円 | 271,574円 | 76.3% | 84,444円 |
| 高等学校(全日制) | 245,431円 | 200,994円 | 81.9% | 44,437円 |
小学校では習い事のほうが大きく、中学校で逆転します。中学生になると、習い事をやめて塾に移るという形が統計にも出ています。
平均の23万円を家計に入れると、どちらの側にもいない数字になります
冒頭の分布表をもう一度見ます。公立中学校の学習塾費は、0円が34.0%、40万円以上が23.3%。山が二つあります。
この形は私立中学校とも違います。私立中学校では0円が48.8%と約半数で、40万円以上は15.7%。公立中学校のほうが、塾に通わせている世帯の割合も、高額を払う世帯の割合も高いという結果です。
| 学習塾費 | 公立中学校 | 私立中学校 | 公立小学校 | 公立高校 |
|---|---|---|---|---|
| 0円の世帯 | 34.0% | 48.8% | 61.0% | 61.4% |
| 40万円以上の世帯 | 23.3% | 15.7% | 4.7% | 15.3% |
| 支出した世帯の平均額 | 349,000円 | 328,000円 | 193,000円 | 381,000円 |
家計の試算に平均の23万円を置くと、塾に行かせない場合は多すぎ、行かせる場合は少なすぎることになります。自分がどちらの側に立つかを先に決めてから金額を入れるほうが、ずれが小さくなります。
高校で0円の世帯が61.4%もあるのは、通信制や定時制を含まない全日制でも、大学進学をしない進路や、学校の補習で足りる場合があるためと考えられます。ただし支出した世帯の平均額は38万1,000円で、中学校より高くなっています。高校では「通うか通わないか」の差が、中学校よりさらに開きます。
塾代は、学年で跳ね上がります
学年別に見ると、金額の動き方が分かります。公立の学校外活動費と、そのうちの補助学習費です。
| 学年(公立) | 学校外活動費 | うち補助学習費 | 構成比 |
|---|---|---|---|
| 小学1年 | 216,850円 | 80,572円 | 37.2% |
| 小学2年 | 211,919円 | 65,947円 | 31.1% |
| 小学3年 | 230,993円 | 76,470円 | 33.1% |
| 小学4年 | 271,274円 | 116,753円 | 43.0% |
| 小学5年 | 295,538円 | 143,318円 | 48.5% |
| 小学6年 | 307,345円 | 186,559円 | 60.7% |
| 中学1年 | 278,315円 | 172,481円 | 62.0% |
| 中学2年 | 341,591円 | 249,354円 | 73.0% |
| 中学3年 | 446,096円 | 390,200円 | 87.5% |
| 高校1年 | 195,191円 | 140,247円 | 71.9% |
| 高校2年 | 225,761円 | 182,074円 | 80.6% |
| 高校3年 | 319,200円 | 285,156円 | 89.3% |
公立中学3年の学校外活動費44万6,096円は、全学年を通じて公立の最大値です。 そのうち87.5%が補助学習費。学習塾費だけで34万1,220円になります。小学2年の6万5,947円と比べると、補助学習費は5.9倍です。
そして高校1年でいったん下がり、高校3年で再び上がります。山は2回、しかも子どもの人数だけ来ます。
このモデルケースでは、どの年がいくらになるか
長子が中学2年、次子が小学5年。2人とも公立という前提で、学年別の金額を年ごとに並べます。
| 年 | 長子 | 次子 | 学校外活動費 合計 | うち補助学習費 |
|---|---|---|---|---|
| 今年 | 中2 | 小5 | 637,129円 | 392,672円 |
| 1年後 | 中3 | 小6 | 753,441円 | 576,759円 |
| 2年後 | 高1 | 中1 | 473,506円 | 312,728円 |
| 3年後 | 高2 | 中2 | 567,352円 | 431,428円 |
| 4年後 | 高3 | 中3 | 765,296円 | 675,356円 |
| 5年後 | 大学1年 | 高1 | 195,191円 | 140,247円 |
ピークは4年後、長子が高校3年で次子が中学3年の年です。学校外活動費だけで年76万5,296円、月に直すと6万3,775円。しかもこの年は長子の大学受験と重なります。
一方、学習費総額(学校に払う分を含む全部)で見ると、ピークの位置が変わります。
| 年 | 長子 | 次子 | 学習費総額 合計 |
|---|---|---|---|
| 今年 | 中2 473,569円 | 小5 392,755円 | 866,324円 |
| 1年後 | 中3 607,325円 | 小6 432,708円 | 1,040,033円 |
| 2年後 | 高1 700,240円 | 中1 545,239円 | 1,245,479円 |
| 3年後 | 高2 580,958円 | 中2 473,569円 | 1,054,527円 |
| 4年後 | 高3 503,697円 | 中3 607,325円 | 1,111,022円 |
学習費総額のピークは2年後、塾代のピークは4年後。2年ずれます。 公立高校1年の70万240円は公立の全学年で最大で、入学金・制服・通学用品が集中するためです。
高校の学習費総額には授業料が含まれています。EP2のとおり、学習費調査の授業料は就学支援金を差し引いたあとの自己負担額(公立高校の平均で年4万5,272円)なので、支援を受ければこの分は小さくなります。授業料を別に引き算しないでください。
年収と、住んでいる場所でも動きます
学習費調査は世帯の年間収入別の集計も公表しています。公立に通わせている世帯の補助学習費です。
| 世帯の年間収入 | 公立小学校 | 公立中学校 | 公立高校 |
|---|---|---|---|
| 400万円未満 | 5.9万円 | 14.9万円 | 14.7万円 |
| 400万〜599万円 | 6.3万円 | 21.4万円 | 11.6万円 |
| 600万〜799万円 | 8.4万円 | 23.3万円 | 20.6万円 |
| 800万〜999万円 | 12.4万円 | 30.1万円 | 24.0万円 |
| 1,000万〜1,199万円 | 18.4万円 | 38.2万円 | 29.7万円 |
| 1,200万円以上 | 26.1万円 | 41.4万円 | 31.7万円 |
公立中学校では、400万円未満の14万9,000円から1,200万円以上の41万4,000円まで、2.8倍の開きがあります。このモデルケースの年収885万円相当は800万〜999万円の帯に入り、補助学習費は年30万1,000円。全体の平均27万1,574円より3万円ほど多い水準です。
住んでいる場所でも動きます。公立中学校の学校外活動費は、学校がある市区町村の人口規模別に100万人以上の市・特別区で約43万4,000円、10万人未満の市町村で約29万3,000円。公立小学校では約35万5,000円と約18万5,000円で、倍近い差があります。
この年収別の集計には標準誤差が併記されています。公立中学校の800万〜999万円の欄は標準誤差率7.17%で、文部科学省が注意喚起している10%は超えていません。ただし年収が高い帯や幼稚園の欄には10%を超えるものがあり、資料でも網掛けで示されています。幅のある数字として扱ってください。
家計調査の「教育費」とは、そのまま比べられません
総務省の家計調査では、夫婦と子供の世帯(夫40〜44歳)の教育費は月2万2,677円、年にすると27万2,124円です。このモデルケースの収入もこの統計から取っています。
ところが上で出した学校外活動費は、今年の時点で2人分の年63万7,129円、月5万3,094円。学校に払う分を除いてもこれだけあります。家計調査の教育費が少なすぎるように見えますが、これは両方とも正しい数字です。 理由が3つあります。
- 費目の範囲が違います。 家計調査の「教育」は授業料等・教科書等・補習教育の合計で、スポーツや音楽の習い事は「教養娯楽」に分類されます。学習費調査の学校外活動費には習い事が入っています
- 子どもの年齢がばらついています。 家計調査の夫40〜44歳の世帯は18歳未満の人員が1.85人ですが、その中には乳幼児も含まれます。中学生と小学生が2人という段階は、平均より重い時期にあたります
- 学年で跳ね上がります。 上の表のとおり、同じ公立中学校でも1年と3年で学校外活動費は1.6倍違います
家計調査の教育費を自分の家計の目安に使うと、子どもが中学生になる時期に足りなくなります。 統計の平均をそのまま置くのではなく、学年別の金額で置き直すのが安全です。
この試算が崩れる条件
- 塾に通わせない選択なら、この金額は当てはまりません。 公立中学校で学習塾費が0円の世帯は34.0%あります
- 通わせる場合は、平均より多くなる可能性があります。 支出した世帯だけの平均は年34万9,000円で、23.3%は年40万円以上です
- 学習費調査は令和5年度(2023年度)の金額です。 物価上昇を入れていません
- 学年別の金額は、同じ世帯を追跡したものではありません。 各学年の平均を並べたものなので、実際の推移とは異なります
- 受験費用が入っていません。 受験料、併願校への納付金は学習費調査の対象外です
- 人口規模別・年収別の金額には標準誤差があります。 幅をもって見てください
- 私立中学校を選ぶ場合、塾代は小学校の段階で先に来ます。 私立小学校6年の学習塾費は年44万2,735円で、全学年を通じた最大値です
塾代のピークが、どの年に来るかを見る
学習費総額のピークは2年後、塾代のピークは4年後。2つの山がずれて来ます。みらいコンパスに子どもの生年と進路を入れると、どの年に資金が足りなくなるかが年ごとの推移で出ます。いま塾代が月いくらかが曖昧な場合は、先に家計コンパスで支出を整理してから試算できます。
みらいコンパスで自分の数字を入れる
この記事の金額は統計の平均値です。自分の条件で見るには、次のように入れます。
- 塾に通わせるかどうかを先に決めます。 通わせないなら学校外活動費から補助学習費を外し、通わせるなら支出世帯の平均(公立中学校で年34万9,000円)を使います。平均の23万円は、どちらでもない数字です
- 学年別の金額で入れます。 公立中学3年は学校外活動費が年44万6,096円、中学1年は27万8,315円。同じ「中学生」でも1.6倍違います
- 子どもの生年を2人とも登録します。2人の学年差で、ピークが重なるか分かれるかが決まります
- 高校の金額は、EP2で出した「授業料以外」(公立で年55万円)を使います。学習費調査の授業料は支援後の自己負担額なので、支援金を引き算しないでください
- 物価上昇率は2%、実質値表示をONにします。学習費調査は2023年度の金額です
2番がこの記事でいちばん効く項目です。学校種の平均ではなく学年別で入れると、資金が足りなくなる年がはっきり出ます。
この記事の金額はすべて、文部科学省と総務省が公表している統計の値です。出所は前提表に記載しています。同じ資料にあたれば、同じ数字が出ます。
EP1からEP3で、子ども2人にかかる金額と、その山がいつ来るかが出ました。残るのは、この山を越えながら老後の資金も積めるのかという問いです。次回で年ごとに試算したところ、足りなくなるのは12年のうち2年だけという結果になりました。
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