高校無償化で増えるのは年33万8,400円、公立は0円|子育て世帯の教育費試算 EP2

家計管理

高校無償化で増えるのは年33万8,400円、公立は0円|子育て世帯の教育費試算 EP2

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このシリーズについて

夫42歳・妻40歳の共働き、子ども2人(長子が中学2年・次子が小学5年)、持ち家でローン返済中というモデルケースで、教育費を払いながら老後も用意できるのかを、文部科学省と総務省の統計から試算しています。全4回のうち第2回です。

本ケースは実在の個人ではなく、統計をもとに構成したモデルケースです。

目次

結論から:増えるのは年33万8,400円、公立高校なら0円

2026年4月、高等学校等就学支援金の所得制限が撤廃されました。私立高校の支給上限額は年45万7,200円です。

ただし「上限額」と「増える額」は別の話でした。このモデルケース(共働き・子2人・実収入ベースで年885万円相当)で、2025年度と比べて何が変わるかを並べると、こうなります。

進路 2025年度の支給額 2026年度の支給額 増える額(年)
公立高校 118,800円 118,800円 0円
私立高校(全日制) 118,800円 457,200円 338,400円

私立なら年33万8,400円、月に直すと2万8,200円。3年間で約101万円です。公立を選ぶなら、この世帯にとって2025年度から1円も増えていません。

そしてもう一つ。授業料が全額支援されても、高校には別の費用が残ります。

区分 授業料以外(年) 3年間
公立高校 551,682円 約166万円
私立高校 900,091円 約270万円

私立高校なら、授業料がゼロになっても年約90万円・月7万5,000円が出ていく計算になります。以下、この2つの数字の出し方を順に開きます。

「私立も見られるかもしれない」と思った

長子が中学2年の秋、進路の話が具体的になってきました。塾の面談で私立高校の名前が出て、帰り道に妻と話しました。「無償化って、うちも対象になったんだよね」。

ニュースでは年45万7,200円と言っています。私立高校の授業料がそのくらいだとすれば、授業料は実質ゼロになるのだろうか。だとすれば公立と私立で迷う理由は、お金ではなくなるのだろうか。

調べてみると、話はもう少し込み入っていました。2025年度に、すでに別の支援が始まっていたのです。

前提を全部開きます

項目 値 出所
就学支援金(新制度) 公立118,800円/私立457,200円 文部科学省「高等学校等就学支援金・新制度の概要」令和8年6月
就学支援金(旧制度) 公立118,800円/私立118,800〜396,000円 文部科学省 令和7年度版リーフレット
高校生等臨時支援金 118,800円(令和7年度限り) 同上
高校の学習費 公立596,954円/私立1,179,261円(年) 文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」令和8年1月16日訂正版
世帯の収入 実収入737,544円/月 総務省「家計調査」2025年・夫婦と子供の世帯・夫40〜44歳

「2026年に高校が無償になった」は、公立については正しくありません

公立高校の授業料支援は、2010年度に始まった制度です。 文部科学省の予算資料に「事業実施期間:平成22年度〜」と記載されています。支給上限額の11万8,800円は、同じ資料に「公立高校の授業料」と書かれている金額です。つまり公立高校の授業料は、支援の対象であるかぎり、以前から実質ゼロでした。

2026年度の改正で公立について変わったのは、年収約1,030万円を超える世帯(共働き・子2人の場合の目安)が対象に入ったという点だけです。しかもその世帯も、2025年度には「高校生等臨時支援金」で同額の11万8,800円を受け取っていました。

2025年度に何があったのか

2025年度(令和7年度)には、所得制限で対象外だった世帯に向けて「高校生等臨時支援金」という予算事業が1年限りで実施されました。年収約910万円以上の世帯に、国公私立共通の基準額である年11万8,800円を支給するものです。

この結果、2025年度にはすべての世帯が最低11万8,800円を受け取れる状態になっていました。2026年度の改正を「ゼロからの支給開始」として計算すると、増える額を多く見積もることになります。

私立高校(全日制)の支給上限額 2024年度まで 2025年度 2026年度〜 2025年度からの増加
年収目安 〜約590万円 396,000円 396,000円 457,200円 +61,200円
年収目安 約590万〜910万円 118,800円 118,800円 457,200円 +338,400円
年収目安 約910万円〜 0円 118,800円(臨時) 457,200円 +338,400円

年収約590万円を超える世帯なら、どの帯でも増加額は同じ33万8,400円になります。

この590万円・910万円は、両親の一方が働き、高校生1人・中学生1人の4人世帯の場合の目安です。共働きだと線が上に動きます。次の表がその一覧です。

このモデルケースはどの帯に入るか

年収目安は、家族構成と働き方で動きます。文部科学省が公表している目安です(金額は私立高校・全日制の場合)。

世帯 子の構成 396,000円 118,800円
両親の一方が働いている 高校生・中学生以下 〜約590万円 〜約910万円
両親の一方が働いている 高校生・高校生 〜約640万円 〜約950万円
両親共働き 高校生・中学生以下 〜約660万円 〜約1,030万円
両親共働き 高校生・高校生 〜約720万円 〜約1,070万円

このモデルケースは共働きで、長子が高校生・次子が中学生以下になります。該当するのは3行目です。年収885万円相当は約660万〜1,030万円の帯に入り、旧制度での支給額は11万8,800円。したがって増加額は33万8,400円になります。

この年収目安はあくまで目安です。実際の判定は「市町村民税の課税標準額×6% − 市町村民税の調整控除額」で行われ、旧制度では15万4,500円未満なら39万6,000円、30万4,200円以上なら不支給でした。目安の計算条件は「給与所得以外の収入はなく、共働きなら両親が同額」です。収入が片方に偏っている世帯や、iDeCo・医療費控除などで課税標準額が動く世帯はずれます。

なお家計調査の「実収入」には児童手当などの社会保障給付も含まれるため、給与収入だけで見ればこれより低くなります。どちらで見てもこの帯の中です。

授業料が無償でも残るもの:年55万円と年90万円

ここで多くの計算が間違える箇所があります。

学習費調査には、私立高校の「学校教育費」が年83万2,650円と出ています。ここから支援金45万7,200円を引けば自己負担が出る——と考えたくなりますが、これは支援金を二重に引いています。

文部科学省の調査の手引き(保護者用)に、記入のしかたがこう書かれています。

高等学校等就学支援金や幼児教育の無償化、学校独自の減免制度等により、減額・免除等を受けている場合は、授業料・保育料から減額・免除額を引き、実際にご家庭が負担した額を計上してください。

つまり学習費調査の「授業料」は、支援金を差し引いたあとの自己負担額です。 証拠は数字そのものにあります。

費目 公立高校 私立高校
入学金等 18,027円 80,290円
授業料 45,272円 279,170円
修学旅行費等 36,500円 62,778円
学校納付金等(施設費など) 35,630円 127,346円
図書・学用品・実習材料費等 62,284円 73,312円
教科外活動費 49,499円 63,440円
通学関係費(定期・制服など) 97,634円 136,790円
その他 6,677円 9,524円
学校教育費 計 351,523円 832,650円
学校外活動費(塾・習い事) 245,431円 346,611円
学習費総額 596,954円 1,179,261円

公立高校の授業料が4万5,272円しかありません。 公立高校(全日制)の授業料は年11万8,800円が標準です。それより小さいのは、就学支援金を受けた世帯(授業料ゼロ)と受けていない世帯を平均した値だからです。

したがって、授業料が全額支援されたときに残る負担は、学習費総額から授業料を除いて出します。この引き算の結果は支援制度に左右されないので、制度改正の前後どちらでも使えます。

区分 学習費総額 − 授業料 = 授業料以外(年) 3年間
公立高校 596,954円 45,272円 551,682円 1,655,046円
私立高校 1,179,261円 279,170円 900,091円 2,700,273円

内訳を見ると、残るものの中身がわかります。公立高校でいちばん大きい費目は通学関係費の9万7,634円で、授業料の2倍以上あります。 定期代と制服・通学用品です。私立高校では施設費などの学校納付金等が12万7,346円、通学関係費が13万6,790円。いずれも就学支援金の対象外です。

授業料が無償になっても、私立と公立の差は消えません

授業料以外の金額を比べると、私立と公立の差は年34万8,409円、3年で約105万円です。

つまり「無償化で私立のハードルが下がった」のは事実ですが、下がりきってはいません。この世帯の場合、私立を選ぶと3年間で約105万円を余分に負担し、支援金が約101万円増える。偶然ですが、ほぼ釣り合う規模です。

支給上限額の45万7,200円は、文部科学省の資料に「私立高校の平均授業料を勘案した水準」と書かれています。平均を基準にしているため、平均より授業料が高い学校では自己負担が残ります。 志望校が決まっているなら、その学校の授業料を確認してください。上の「授業料以外」は下限として扱うのが安全です。

増えた101万円を、大学の費用と並べてみる

EP1で出した私立大学4年間の費用は約531万円でした。3年間で増える約101万円はその約19%にあたります。私立大学の初年度納付金150万7,647円で見ると約3分の2です。

助かる額ではありますが、大学の費用を置き換えるほどではありません。高校と大学を通した金額はこうなります(授業料が上限まで支援された場合)。

進路 高校3年(授業料以外) 大学4年 合計
公立高校 → 国立大学 約166万円 約243万円 約408万円
私立高校 → 私立大学 約270万円 約531万円 約801万円

この試算が崩れる条件

  • 年収目安は目安です。 判定は市町村民税の課税標準額で行われます。同じ年収でも控除の状況で帯が変わります
  • 志望校の授業料が平均を超えると、授業料の自己負担が残ります。 45万7,200円は平均を勘案した上限額です
  • 学習費調査は令和5年度(2023年度)の金額です。 物価上昇を入れていません
  • 自治体独自の授業料減免がある地域では、負担がさらに下がります。 都道府県ごとに上乗せ制度があります
  • 受験費用が入っていません。 受験料、併願校への納付金は学習費調査の対象外です
  • 新制度には国籍・在留資格の要件があります。 対象外の生徒には経過措置が別に用意されています
  • 制度は3年以内に検証されることになっています。 改正法に見直しの規定があります
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公立と私立、3年分の差が家計のどこに出るかを見る

年33万8,400円が増え、年34万8,409円が余分にかかる。この2つが同じ年に起きるわけではありません。みらいコンパスに子どもの生年と進路を入れると、どの年に資金が足りなくなるかが年ごとの推移で出ます。いま毎月いくら使っているかが曖昧な場合は、先に家計コンパスで支出を整理してから試算できます。

みらいコンパスで試算する →先に家計コンパスで支出を整理する →

みらいコンパスで自分の数字を入れる

この記事の金額は統計の平均値です。自分の条件で見るには、次のように入れます。

  1. 高校の教育費は、この記事の「授業料以外」の金額を入れます。 公立なら年55万円、私立なら年90万円。授業料を別に入れると二重計上になります
  2. 志望校が決まっているなら、その学校の授業料から45万7,200円(公立は11万8,800円)を引いた額を足します。引いて0以下なら足しません
  3. 子どもの生年を2人とも登録します。高校の3年間が重なるかどうかで、必要額のピークが変わります
  4. 物価上昇率は2%、実質値表示をONにします。学習費調査は2023年度の金額です
  5. 住宅ローンの残りと、老後の積立額も入れます。高校の3年間に積立を止めずに済むかを見るのが目的です

1番と2番は、この記事でいちばん間違えやすいところです。学習費調査の金額に授業料は含まれているので、支援金を引き算しないでください。

この記事の金額はすべて、文部科学省と総務省が公表している統計の値です。出所は前提表に記載しています。同じ資料にあたれば、同じ数字が出ます。

次の回
  • EP3 「公立なら安い」は本当か(近日公開)

この記事で出てきた学校外活動費——塾と習い事です。公立中学校では、学習費総額54万2,450円のうち35万6,018円がここに入ります。学校に払う額より塾代のほうが大きい。次回はその中身を見ます。

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