子ども2人を大学まで出すと1,713万〜3,246万円|子育て世帯の教育費試算 EP1
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夫42歳・妻40歳の共働き、子ども2人(長子が中学2年・次子が小学5年)、持ち家でローン返済中というモデルケースで、教育費を払いながら老後も用意できるのかを、文部科学省と総務省の統計から試算しています。全4回のうち第1回です。
- EP1 総額:大学まででいくらかかるのか(この記事)
- EP2 高校無償化で、いくら楽になるのか
- EP3 「公立なら安い」は本当か(近日公開)
- EP4 教育費と老後は両立するか(近日公開)
本ケースは実在の個人ではなく、統計をもとに構成したモデルケースです。学習費は文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」の令和8年1月16日訂正版、大学費用は文部科学省の最新調査を使っています。
結論から:子2人を大学まで出すと、1,713万円から3,246万円
幼稚園3歳から大学卒業まで、子ども2人ぶんの合計です。進路によってこれだけ幅が出ます。
| 進路 | 国立大学まで | 私立大学まで |
|---|---|---|
| すべて公立 | 1,713万円 | 2,290万円 |
| 高校だけ私立 | 2,060万円 | 2,637万円 |
| 中学から私立 | 2,670万円 | 3,246万円 |
いちばん軽い組み合わせといちばん重い組み合わせで、1,533万円の差があります。住宅ローン1本ぶんに近い金額が、進路の選び方で動くということです。
ただしこの数字には、受験にかかる費用と、自宅外から通う場合の仕送りや住居費が入っていません。そこは後で触れます。
よく見かける「幼稚園から高校まですべて公立で596万円」という数字は、2026年1月に訂正される前の値です。この記事では訂正後の614万円を使っています。理由は後述します。
「無償化になったし、なんとかなる」と思っていた
長子が中学2年になった春から、塾代が月に3万円を超えました。夏期講習の案内を見て、妻が「これ、冬もあるんだよね」と言ったあたりから、なんとなく不安になってきます。
ニュースでは高校の授業料が無償化されたと言っています。所得制限もなくなったらしい。だから高校はなんとかなるのだろう、と思っていました。
では大学は。次子はまだ小学5年で、2人の学費が重なる時期が来ます。そのころ自分は何歳で、住宅ローンはあと何年残っているのか。老後の積立はそのあいだ続けられるのか。
調べはじめると、出てくる金額がばらばらでした。「教育費は1人1,000万円」と書いてあるサイトもあれば、「高校から大学まで942万円」と書いてあるサイトもあります。どれも出所が違い、何年のデータなのかも書かれていません。
そこで、公的な統計だけで組み直してみることにしました。
前提を全部開きます
この記事で使った数値と、その出所です。
| 項目 | 値 | 出所 |
|---|---|---|
| 幼稚園〜高校の学習費 | 学校種別の15年累計 | 文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」令和8年1月16日訂正版 |
| 私立大学の費用 | 初年度1,507,647円/2年目以降1,267,283円 | 文部科学省「私立大学等入学者に係る学生納付金等調査」令和7年度入学者 |
| 国立大学の費用 | 入学料282,000円/授業料535,800円 | 標準額(平成16年文部科学省令第16号) |
| 世帯の収入・支出 | 実収入737,544円/月 | 総務省「家計調査」2025年・夫婦と子供の世帯・夫40〜44歳 |
なぜ「596万円」を使わないのか
検索すると、幼稚園から高校まですべて公立で596万円、すべて私立で1,976万円という数字がたくさん出てきます。これは文部科学省の調査が2024年12月25日に公表されたときの値です。
この調査は、2026年1月16日に数値が訂正されました。 文部科学省の正誤情報によれば、令和5年度分で学習費総額と内訳が訂正されたのは、公立小学校・私立小学校・公立中学校・公立高等学校・私立高等学校です。
| 15年間の総額 | 訂正前 | 訂正後 |
|---|---|---|
| すべて公立 | 596万円 | 614万円 |
| すべて私立 | 1,976万円 | 1,969万円 |
とくに私立高校が大きく動いていて、年額で約103万円から117万9,261円になりました。私立高校を3年通う前提なら、訂正前の数字で計算すると十数万円ずれます。
なぜ「942.5万円」を使わないのか
高校入学から大学卒業までで942.5万円、という数字もよく引用されます。これは日本政策金融公庫の調査によるものですが、この調査は2021年12月20日の公表を最後に更新されていません。
5年前の金額です。使えないとまでは言いませんが、少なくとも「最新」ではありません。この記事では、より新しい文部科学省の調査で組んでいます。
幼稚園から高校まで:進路で478万円変わる
まず子ども1人ぶん、幼稚園3歳から高校卒業までの15年間です。
| 進路 | 15年間の合計 |
|---|---|
| すべて公立 | 614万円 |
| 高校だけ私立 | 788万円 |
| 中学から私立 | 1,092万円 |
すべて公立と、中学から私立の差が478万円。高校3年間だけを私立にした場合の差は174万円です。
中学を私立にすると、差が一段大きくなります。 私立中学の学習費は年156万円で、私立高校の年118万円より高いためです。高校には就学支援金がありますが、中学にはありません。
大学で、もう一度288万円が分かれる
大学4年間の費用です。
| 初年度 | 2年目以降(年) | 4年間 | |
|---|---|---|---|
| 国立大学 | 817,800円 | 535,800円 | 243万円 |
| 私立大学 | 1,507,647円 | 1,267,283円 | 531万円 |
差は288万円です。私立大学の初年度に入学料が240,365円かかり、2年目からは消えます。
国立大学の数字には注意が必要です。535,800円は標準額であって、各大学は標準額の20%増を上限に自由に設定できます。2026年度にはこれを引き上げた大学も出ています。「国立なら一律」という前提は崩れつつあります。
子ども2人だと、いくらになるか
幼稚園から大学まで、子ども1人ぶんの合計です。
| 進路 | 国立大学まで | 私立大学まで |
|---|---|---|
| すべて公立 | 857万円 | 1,145万円 |
| 高校だけ私立 | 1,030万円 | 1,319万円 |
| 中学から私立 | 1,335万円 | 1,623万円 |
これを2人ぶんにしたものが、冒頭の表です。「教育費は1人1,000万円」という言われ方は、すべて公立で私立大学に進んだ場合(1,145万円)に近いことがわかります。おおよそ当たっている一方で、進路によっては1.4倍にも0.75倍にもなります。
この試算が崩れる条件
- 受験費用が入っていません。 受験料、模試、併願校への納付金は学習費調査の対象外です
- 自宅外から通う場合の仕送りと住居費が入っていません。 下宿なら、ここに年100万円単位が乗ります
- 学部系統を区別していません。 私立大学の531万円は全体平均です。理系や医歯系はこれより大きくなります
- 浪人・留年・大学院は見ていません
- 物価上昇を入れていません。 これは「いまの金額」です。15年後の授業料が同じである保証はありません
- 高校の金額は令和5年度のもので、2026年度の制度改正を反映していません。 私立高校を含むコースは、就学支援金の増額分だけ下がる可能性があります(EP2)
つまりこの数字は、下限に近い見積もりとして扱うのが安全です。
計算を狂わせやすい3つの点
①年額に年数を掛けてしまう
「公立中学は年54万円だから3年で162万円」と計算したくなりますが、文部科学省が公表している15年累計は、各学年の平均額を積み上げたものです。学年によって金額が違うため、年額×年数とは一致しません。
すべて公立の15年間でいうと、年額×年数では617万円、公表累計では614万円。3万円ずれます。小さい差ですが、公表値があるならそちらを使うほうが正確です。
②学習費調査に大学は入っていない
「子供の学習費調査」は幼稚園から高校までの調査です。大学は別の調査になります。この2つを混ぜずに、それぞれの出所を分けて積む必要があります。
③家計調査の「教育費」と学習費調査は、足し引きできない
家計調査では、夫40〜44歳の子あり世帯の教育費は月22,677円、年にして約27万円です。一方で学習費調査の公立中学は年54万円。倍近く違います。
これは矛盾ではありません。家計調査はその時点の世帯平均で、子どもの年齢はばらばらです。保育園児と中学生では金額がまったく違います。対して学習費調査は子ども1人の、その学年の金額です。数えている対象が違うので、片方を使ってもう片方を補正する、といった使い方はできません。
自分の子どもの年齢と進路で、同じ計算をしてみる
この記事の金額は統計の平均値です。みらいコンパスに子どもの生年と進路を入れると、教育費の山がいつ来るか、住宅ローンの返済や老後の積立と重なるかが、年ごとの推移で出ます。いま毎月いくら使っているかが曖昧な場合は、先に家計コンパスで支出を整理してから試算できます。
みらいコンパスで自分の数字を入れる
ここまでは統計の平均値です。実際にいくら必要かは、子どもの年齢、進路、世帯の収入で変わります。みらいコンパスで次のように入れると、自分の条件で試算できます。
- 子どもの生年を登録します。2人いるなら2人とも登録します。 山が重なる時期は、これを入れないと見えません
- 教育費は、この記事の表から該当する進路の金額を入れます。迷う場合は「すべて公立」と「高校だけ私立」の2通りで見ます
- 物価上昇率は2%、実質値表示をONにします。これを入れないと、15年後の学費が今日と同じ金額で計算されます
- 住宅ローンの残りも登録します。教育費のピークとローン返済が重なるかどうかが、この試算のいちばん重要なところです
- 老後の積立額も入れます。教育費を払いながら積立を続けられるかを見るのが目的です
3番と4番は結果が大きく動くところなので、特に確認してください。
この記事の金額はすべて、文部科学省と総務省が公表している統計の値です。出所は前提表に記載しています。同じ資料にあたれば、同じ数字が出ます。
2026年4月から高校の授業料支援に所得制限がなくなりました。私立高校の支給上限額は年45万7,200円です。ただしこのモデルケースで実際に増えるのは年33万8,400円、公立高校なら0円でした。授業料が無償になっても残る負担とあわせて、次回で見ています。
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